お餅にすると違う絹ごし食感
「デワノモチ」「でわのもち」は、他の産地では作付けされていない山形県庄内平野特有のお餅を作るモチ米、お餅とおこわ加工専用の伝統的な糯米(もちまい)の品種です。全国的には知名度も低く市場流通もしていない「もち米」の品種です。
長年、いろんな品種を栽培してきたベテラン生産者、佐藤芳紀さんは「デワノモチ」の品質の良さ、お餅にした時の美味しさをよく知っています。しかし、一般的には倒伏しやすいなど栽培の難しさや収穫量が格段に低いことで販売用に沢山は作りたがらないという事情があるのです。つまり商業ベースになりにくいということです。
「デワノモチ」は天候に敏感で、非常に弱い品種なので、苦労の割に報われない品種として栽培農家は激減しました。ですから、庄内の農家ではお正月用に自宅用の分だけこっそり少しだけ作付します。
でわのもち弱く収穫量少ない
このように栽培が難しくばかりか品質の確保がお天気に左右されやすく2等米になりやすいという弱みもあって作付が嫌われやすいのです。粒が小さく、見た目が悪く収穫量が少ないお餅加工専用の品種「デワノモチ」。
マイナス面だけが目だってしまう特性があることや栽培が難しく収穫が少ない品種と承知の上で佐藤芳紀さん他の生産者の皆さんが丹精こめて栽培してくれました。こんな時こそ経験豊富なベテランの出番ということなのです。
特徴的な絹ごしのキメ、粘りと煮崩れしない品質が「でわのもち」「デワノモチ」の他にはない魅力であり特徴なのです。
でわのもち太陽いっぱい栽培
デワノモチを倒伏させないで栽培するには肥料のやり過ぎは控えます、稲と稲の空間を大きく取り日差しが根元まで入るようにします。見た目は特に田植えした後の景色はさびしい限りです。植え込み本数が少ない上に、苗と苗の間隔を思いっきり広くとるのです。
植える感覚を広くとることで苗が大きくなって株と株の間が混み合ってくる6月頃から日光が株もとまで届くすっきり栽培の効果が出はじめます。稲の茎が混み合わないすっきり栽培は太陽の光と風通しを良くすることで、化学肥料を出来るだけ控えた栽培も可能になるのです。
同時に稲の草丈の延びすぎを防ぎます。田植えした時にみすぼらしい田んぼは穂が出る頃には太陽の光を稲の根元まで日光が届きます。余計な茎を作らないすっきり爽やかな稲の姿には力強さと美しさが感じられ程になります。
そうすることで太陽光がいっぱい受けられ、イネ自体の健康を重視した病気に強い抵抗力のある体質になるのです。それでも、もちろん「デワノモチ」なら収穫量が少ないのは覚悟しています。
でわのもち 絹ごしの杵つき餅
「デワノモチ」の特徴は、お米のときも見た目は良くありません。お米の粒も小さく品質も劣ります。おコメの品質検査では2等米になりやすいのです。
ところが、「お餅」や「おこわ」にすると美味しさが引き立ち、食味は驚きです。粘りが強く真っ白い「絹ごしのツルツル感」のあるきめ細かいしっとりとした餅がつき上がります。お雑煮にしたときには「絹ごし」の食感と強いなめらかな粘りと「煮崩れしない」ところが特徴です。
「デワノモチ」は気候の変化にも、病気にも弱い外的要因に敏感な「ひ弱な性質の品種のもち米」です。しかしそのお餅を食べたときに初めてその魅力が発見できるのです。
デワノモチ弱さが美味しさに
「弱さ」がまさに「美味しさ」に繋がっているかもしれません。「美味しいものはか弱い」ということがいえるのかもしれません。そこが美味しさの秘密なのかもしれません。
何で広く出回らないかと言うと、普通のもち米に比べ「デワノモチ」は収穫量が格段に少いから販売用には農家は苦労が多いばかりで作りたがりません。苦労が多い割にはお金にならないというわけです。
ちなみにある年の収穫量は、台風と長雨で平年の約半作、それほどか弱い、繊細な品種なのです。だからきめの細かいなめらかな「絹ごし」のお餅になるのです。
もち米の「でわのもち」の栽培方法は日光を株元まで届くような、独特のすっきり感のある栽培をして倒伏を防止します
自宅用にデワノモチを植える
皆さんのところはは、お正月のお雑煮はどんな作り方でしょうか。私たちの山形県、庄内地方ではお雑煮は焼いた丸餅で、お正月はいろんな丸餅を食べてを過ごします。そして、他の地域の 山形県では鏡もち以外は切りもちが一般的だけに東北でも他にはありません。
江戸時代の海運と西回り航路の発展によって関西の文化に大きく影響を受けた珍しい地域ということのようです。
さて、お餅のおいしさに大きく関わる餅の原料になるモチ米の品種のお話をしたいと思います。一般的に国産モチ米の品種は、数種類が、流通して、こがねもち、ヒメノモチ、はくちょうもち、わたぼうし、ヒヨクモチなどが主流のようです。
庄内地方では、経験上、農家がこっそり作付して自分の家で食べる品種「デワノモチ」という市場流通しない知名度の低いモチ米です。
デワノモチ作付が少ない理由は
この「デワノモチ」を原料にして作る丸餅、切り餅、は「デワノモチ」の品質の悪さ、等級の悪さ(2等米になりやすい)に比較すると秀逸なお餅になるのです。お米の検査は品質の検査で、美味しさの検査ではないから2等米になると価格が安くなります。それでもデワノモチ特有の粘りがあって、きめが細かくて、しかも最高に美味しいお餅になるのです。
そして、品質が低下することにも関連しますが「倒伏しやすい」稲刈りする前に根元から折れて、お米の稔りに障害が出たり、稲刈り作業が支障が出ることになります。収穫時期のこのような障害は生産者は特にきらう原因になります。
でわのもちの作付が増えていかない大きな理由は、収穫量の低さです。他ももち米品種が、600kg/10㌃に対して、お天気にもよりますが、2割程度減収しますからこの違いは大きなものがあります。中々このような低収量のもち米に挑戦するのは難易度が高いといえます。
最近、農水省の6次産業化という名のもとにようやく生産者が「でわのもち」によるお餅を作り始めています。味の農園では10年以上前から「でわのもち」の丸餅、切り餅を製造販売し始めて以来、人気の商品としてお客さまから悦んでいただいております。もちろん添加物は無添加です。
美味しい餅 デワノモチ まとめ
しかし、この品種デワノモチは一般に市場流通しませんので、大手メーカーが製造することはできません。
なぜかというと、デワノモチは、栽培面積が限られているうえ1、収穫量が少ない。2、収穫期に稲が倒伏してしまい収穫に手間取る。3、収穫期が遅い(11月ころ)ので出荷が遅れるなど農家の「生産しても割に合わない」と作付面積が激減しました。
昔は、どこの農家でもこのデワノモチを作付してお正月用のお餅にしていました。生産者は、この「デワノモチ」の作付は面倒でとても作付したがりません。倒伏(稲刈り前にイネが倒れること)しやすいのです。
ところが、美味しさをよく知っている一部のベテラン生産者は、自分の家のお正月に食べる分だけはおいしい「でわのもち」を食べたいと、こっそり植え付けして収穫しはじめています。他の品種のモチ米ではお餅にしたがらないし、昔とは違って沢山お餅はいらないから美味しいお餅が食べたいと本音を云っています。
これが近年、美味しさが見直されて6次産業化の流れもあってか近くの産直市場などでデワノモチの販売が始まっています。そして人気がでています。とても良い取り組みではないでしょうか。