猛暑の高温障害を克服できるか
山形県内では近年、猛暑でコメの生産に影響が出ている中、暑さに強く、収穫量が確保できる新たなコメの品種が開発されました。
このコメは、県が開発した「つや姫」「雪若丸」に続く新品種「山形142号」です。山形県産米をめぐっては、R5年の猛暑の影響で評価が最も高い1等米比率が50%を下回って過去最低となるなど、温暖化への対応できる品種が求められています。
こうした中、新たな品種は県の研究所が平成24年から品種改良を重ね、先月27日に山形県が「認定品種」に指定しました。

温暖化で9月の気温が高く夜温も高いため高温障害に
猛暑に強い県産米「雪若丸」同等に
暑さに強いとされる県産米「雪若丸」と、食味がよいとされる別の品種をかけ合わせていて、県産米の「はえぬき」と比べて収穫量が1割程度、多く確保できるということです。食味は「はえぬき」より良く、粒が大ぶりで白さがあり、しっかりとした食感だとしています。
山形県産の食用米の新品種が開発されるのは、平成30年に作付けが始まった「雪若丸」以来となります。

夏の暑さに強い品種の開発は緊急性がある
ネーミングを県内の小中学生から
新品種の名称は県内の小・中学生から募集して決定し、再来年に作付け開始を目指すということです。県農林水産部は「県内での認知度を高め、猛暑でも生産者がつくりやすいコメとして普及させたい」としています。
とにかく待ったなしの状況が現場にはあります。夏の気温が35℃を超える日数が年々増えており、従来の品種では対応できない危機感が生まれています。
近年、特に顕著な温暖化の異常気象に対応できる「つや姫」や「雪若丸」に並ぶ山形県を代表する美味しいお米のデビューが待たれます。

高温障害を受けたお米は
お米の高温障害とは何か?
米の高温障害の症状とは登熟期(お米が稔る時期)の気温が高すぎて品質が低下する「高温登熟障害」が、近年、特に西日本を中心に、年によっては東北にまで発生し、大きな問題となっています。
特に夜の高温はお米の呼吸量が活発化し、でんぷんを体内に蓄積できなくなるため、未熟米や着色米など、一等米に必要なお米の粒ぞろい(整粒歩合が)が基準をクリアできなくなり、精米した時の精米の歩留まりが下がりお米のコストに悪影響となります。
その症状としては、高温障害の症状としては、白未熟粒(米が白く濁る) 胴割粒(亀裂が入って割れやすくなる) 充実度の低下(偏平となり縦溝が深くなる) 細長くなったり小粒になったりした整粒歩合の低下(お米の粒ぞろいが悪い)を招くことになります。

かつては9月になると気温が低下して爽やかな秋風が吹いた
1等米の割合が50%まで低下
令和5年産米の山形県の1等米比率は50%と嘗てない数値となりました。原因はお米が実る時期に、35℃以上の高温が続き、夜温の高い熱帯夜もあったことからデンプンの蓄積が停滞したことによるものと推定されます。
お米の高温障害とは、稲の吸水が蒸散に追いつかず、しおれて枯れたり、品質が低下したりする障害です。気温が30℃以上になると光合成が妨げられ、特に夜温が高くなると、でんぷんが十分に作れないことが原因となります。
近年、地球温暖化に伴うお米作りの課題は根本的には高温に対する抵抗力の強い品種の開発です。

高温障害のない正常な1等米の精米状態
大きな期待山形142号のデビュー
これまでの品種は主に1,「寒さに強い」、2,「病気に強い」、3,「倒伏しない」の3条件に合致する品種が開発されてきた経緯があります。しかし、現状を見ると顕著な温暖化の中で新たな課題が明確化され、1,「高温に対する抵抗力」があり、2,「品質の安定すること」、しかも3,「美味しいお米」が訴求される時代といえます。
山形142号は、2012年に、鶴岡市の県山形県水田農業研究所で開発された県産ブランド米、雪若丸を母に持ち、父として早生種で食味が良い「山形122号」を掛け合わせた生産者認定制度などを設けたつや姫や雪若丸とは異なり、「はえぬき」のように幅広く生産できるようにする。
食味評価で、「はえぬき」と比べて食味や粒の白さ、炊飯後の光沢が良好だった。語が大振りでしっかりした食感が特徴です。体温、高温体制は9段階のうち4番目に高く、温暖化や気象変動の近年の異常気象にも対応できるか大きな期待が集まります。
▼庄内平野の稲刈はじまる