さくらんぼ桜桃が県の木に
昭和45年の万国博覧会がきっかけで山形県の木が決まりました。1970年に大阪で開催された万国博覧会を記念して県の木を定めることになり、昭和41年に山形県になじみの深い木の中から3種類の木を選び、その中から県民のみなさんに募集が始まりましました。その結果、桜桃 さくらんぼの木が県の木になりました。(昭和57年3月31日制定)
現在は東京の国会議事堂の前庭にも佐藤錦、紅秀峰、紅さやかなどのさくらんぼの木が植え付けられ、季節になると赤い実をつけて、視察者をよろこばせているようです。
さすがに東京では雪が積もる冬は不十分なので、落葉果樹に必要な休眠(果樹が一定期間休む)が取れませんから山形のようにはいきませんが、少ないけれども実がついて食べられているようです。
実は隠れたところの努力が沢山あっての結果のようですが、毎年、何とかして実をつける所まで頑張っているようです。
桜桃の花見は桃やリンゴも咲く
さくらんぼの花は、ソメイヨシノの満開から約1週間後に咲き始め、開花後4~5日で満開を迎えます。山形ではゴールデンウイーク期間頃にさくらんぼの花が開花します。つぼみの入った花芽の塊を「花束状短果枝」といいますが、この塊から20輪前後の白い花が咲くと同時に数枚の葉っぱが出てきます。
桜桃の若葉も美しい色合いを見せてくれます。サクランボの白い可憐な花と鮮やかな緑の葉を同時に楽しむことができます。ソメイヨシノの花見が終わったこの頃は、さくらんぼ、りんご、ラフランス、桃の花も一斉に咲き始めます。山形はお天気も良い日には果樹地帯に行くと甘いフルーツの香りをいっぱいにお花見が楽しめます。
▼さくらんぼの剪定から収穫まで動画
県の木はさくらんぼ 花は紅花
山形県の県木は何といっても桜桃「さくらんぼ」ですが、山形県の県花はべにばな(紅花)です。山形県では江戸時代に最上紅花の栽培が盛んでした。紅花は黄色から赤になる花を咲かせるキク科の1年草で、花弁から染料や口紅の元になる色素がとれます。
この紅花を原料に江戸時代には化粧品の「紅」として女性には大人気を博しました。あまりの人気で一時は同量の金より高額の値が付いたという記述もあるようです。
ちなみに山形県の県鳥は「オシドリ」、県の獣は「カモシカ」、県の魚は「サクラマス」となっています。それぞれに頷けるものがありますね。
さくらんぼ生産 山形県の概要
山形でさくらんぼの栽培が始まったのは、明治8年のことです。全国で育成が試みられる中、実らせることに成功したのは本県とその周辺の県だけでした。
栽培成功の大きな要因となったのは気候でした。雨に弱いさくらんぼにとって、山に囲まれ空梅雨になることが多い山形の環境が非常に適していたのです。当時は生食での流通が難しかったことから、缶詰用の栽培が主流でした。
現在つくられている品種の最高峰は何といっても知名度高い「佐藤錦」。黄色に紅色が差す美しい見た目、甘味と酸味の絶妙なバランスが人々を虜にしてきました。
佐藤錦誕生ストーリー
生みの親は、東根市の佐藤栄助氏。家業の醤油醸造を果樹栽培に切り替え、日持ちが良く甘みにも優れた生食用のさくらんぼを、関東方面に出荷できないかと考えます。
缶詰によく使われていた「ナポレオン」と、傷みやすいが味は良い「黄玉」でした。そして、はじめて実を結んだのは、交配開始から10年もの月日が経った大正11年。さらにその2年後に1本の原木を定め、昭和3年、親友の苗木商・岡田東作氏が付けた「佐藤錦」の名で、世に送り出したのです。
山形県のさくらんぼ栽培面積は、約3,000haで全国一を誇り、このうち、約7割を「佐藤錦」が占めています。
現在では、さくらんぼのトップブランドとなった「佐藤錦」ですが、昭和50年代までは、主に果肉が固く収量の多い「ナポレオン」が加工用として栽培されており、雨による実割れが多い「佐藤錦」は、生食向けに一部で栽培されるのみでした。
さくらんぼ 佐藤錦と新品種
佐藤錦のデビューは、山形がさくらんぼ日本一として躍進する大きなターニングポイントになりました。誕生から100年たった今も、トップスターであり続けています。
昭和の終わりから平成にかけて、佐藤錦に追いつけ追い越せと、様々な品種が生まれました。ジューシーでさっぱりとした甘さが特徴の「南陽」、甘酸っぱく赤肉の「紅さやか」、甘みが濃くしっかりした果肉の「紅秀峰」、大粒で味が濃厚な「紅てまり」、鮮やかな赤色の「紅きらり」、果汁が多く早生の「紅ゆたか」など。
そして、期待の大型新人が「やまがた紅王」です。艶のある紅色が鮮やかで、なんと500円玉よりも大きい直径約3cmの大玉は食べ応えも抜群。令和5年の本格デビューに向けて注目を集めています。
さくらんぼの実が出来るには
さくらんぼは他の品種の花粉が付かないと実がならない特性があります。そのため、さくらんぼ園では複数の品種が栽培されています。一番多い、美味しいとされる佐藤錦にはナポレオンとか紅さやかがいいとか、その地域によって品種に合った組み合わせがあるようです。
また、さくらんぼはミツバチなどの昆虫が花粉を運ぶことにより交配し結実します。例外として、山形県が育成した「紅きらり」という品種は自分の花粉だけでも実を結ぶ特別な性質を持っています。遅霜被害があったときはその違いを発揮してくれることでしょう。
さくらんぼは、同種や近縁種の花粉では受粉できなかったり、成長しても止まったりして繁殖できない性質があります。これを「自家不親和性」といいます。
佐藤錦には紅さやか、紅秀峰など
そのため、必ず他の品種を受粉樹としてさくらんぼの園内に混ぜて植えなければなりません。しかも、違う遺伝子を持つ品種同士では受粉効率は間違いなく低下します。
例えば「佐藤錦」を効率よく受粉させるためには、古い品種の「ナポレオン」や「高砂」最近多くなっている「紅さやか」などがパートナーです。受粉率をアップさせるためには、最低でも20%別の品種を同一の園地に植えるのが基本とされています。
ですから、美味しい佐藤錦を収穫したいならほかの種類の品種のサクランボの満開が同時であることが佐藤錦の豊作のための理想になるのです。
さくらんぼ 豊作にするために
そのために、さくらんぼの受粉にはミツバチやマメコバチなどの昆虫の活躍が欠かせません。ミツバチなどの昆虫が花粉を運ぶことによりさくらんぼは結実します。
さくらんぼの受粉の最適な期間は約5日位しかなく、その間のお天気が温かく風も穏やかだと条件が最適です。人工授粉に適した天候は、晴天で風が弱く気温15℃~20℃程度と言われます。
人工授粉は、風がない時で、できれば10時~14時頃までが最適で、花の満開が終わる日まで、毎日行います。作業を行う前には受粉する木に水を与えます。散水して適度の湿度を供給します。土が乾燥していると受粉条件は良くないのです。
参考:山形県県政情報、農林水産部 園芸大国推進課ほか