月山高原にんじんの土作り
生産者は月山高原の赤土粘土の特徴を活かすために、より以上に土壌菌を旺盛にしてキメ細かな果肉をゆっくりじっくり育てる工夫をしています。つまり、化学肥料を出来るだけ抑えた土作りが前提条件になります。
木材のくず、食品廃棄物、おから、デントコーンを植えてすき込む、など出来るだけ炭素率の高い資材を利用します。堆肥発酵促進剤ワーコム、内城菌を使った良質の堆肥はそのためにあると云うわけです。
ワーコムの堆肥づくりをして土壌に散布していくことを続けることで、年々土壌が改善されてくる実感が得られます。
硝酸態窒素が野菜の成長に必要
植物の成長に必要な栄養素は窒素・リン酸・カリウムです。このうち窒素は葉や茎の成長に必須の栄養素です。窒素は大気中の酸素と共に遍満しています。植物は大気中の窒素を直接吸収することができませんが、この土壌に含まれた硝酸態窒素を根から吸収することで窒素を取り込んでいます。
植物はこの硝酸態窒素をため込んで蓄えておくことができます。野生の草木が肥料などを与えられることがない栄養素が少ない環境でも、枯れるどころか旺盛に育っているのはこの硝酸態窒素を取り込み、そして蓄えているためです。
このように作物では成長をサポートするため、窒素配合の化学肥料が多く使われています。それは空気中から窒素を養分として取り込めないことから生まれています。野菜作りの多くの問題点はこの窒素肥料の働きの効果と相反する硝酸態窒素残留などの相反する功罪と矛盾が存在します。
窒素イオンは大気中に存在
硝酸態窒素(しょうさんたいちっそ)とは地球の地表付近の大気の主な成分は窒素と酸素がほとんどを占めており窒素が約80%で酸素が約20%、のこりは微小な割合のアルゴンと二酸化炭素です。
このように窒素は目に見えないながらも日々触れている存在です。また窒素はアミノ酸・タンパク質・DNAやクロロフィル(葉緑素)の元となり、植物を構成する大変重要な存在です。
生物地球化学的循環のひとつである窒素循環により、大気中の窒素は微生物などで無機化されて土壌に取り込まれてアンモニア態窒素、亜硝酸態窒素、そして硝酸態窒素と形を変えていきます。
このように窒素が化学反応により酸化したものを硝酸態窒素といいます。
硝酸態窒素の低減のため
硝酸態窒素は野菜を効果的に生産するために重要な栄養素とされ、従来は肥料の中に多く含まれておりこれを積極的に与えることでより効果的に野菜を生育させ利益を上げることができると考えられてきました。
そのため積極的に利用し効率よく野菜を生産するための研究も広く行われていたのです。ですがその後の研究で、植物は土壌から吸収した硝酸態窒素を完全に使い切ることができなかった場合はそれを内部に蓄積し、これを食べた人間に健康被害を与える危険性があることがわかっています。
硝酸態窒素を残さない栽培
窒素は成長の過程で野菜に吸収される際、主に硝酸態窒素という硝酸イオンの形をとり、それらが結合した硝酸塩として存在しています。中でも葉物野菜には吸収した硝酸態窒素が残留しやすい傾向にあると言われています。
野菜を摂取することで、残留している硝酸態窒素も共に摂取することになるのです。日本において硝酸塩自体は、適種・適量であれば食品添加物として認められています。
ですが摂取後に亜硝酸イオンへと変化することで、メトヘモグロビン血症を発症させるなど体内へ良くない影響を与える恐れや、発ガン性物質となるニトロソ化合物を生成する恐れがあるともいわれています。
残留窒素 海外と日本の違い
もちろんまだまだ研究が進められている分野ではありますが、アメリカやヨーロッパ等の国では硝酸態窒素について日本以上に厳しい基準が設けられていることは事実です。
多くの方が安心で安全で健康に良い食を望んでいます。そのひとつの正解が、野菜における硝酸態窒素を低減することであり、もっとも有効なのは栽培方法を工夫することであるのは間違いありません。
収穫量を増やすことに注力しすぎて過度な化学肥料の投入、天候不順も考慮した有機肥料中心の無理のない施肥設計が大切です。
やはり良質堆肥を土作りの基本にした土壌微生物を意識した栽培方法が安定的で食味の良い安全な栽培方法です。時間はかかりますが土作りが大切になります。
日本の硝酸イオン低減の対策
現在、農林水産省では栽培に使用する肥料の中の硝酸態窒素の含有量や与える量をガイドラインで規制しています。2006年には「野菜の硝酸イオン低減化マニュアル」を発行しました。
様々な成分の中に含まれる量を指定することで、人体に対する影響を極力減らし安全に食べることができるものを生産するように指導しています。
とはいえ実際には野菜が必要とする栄養素であることや、生産性に大きく影響する問題でもあるため必ずしもこのガイドラインが遵守されていないという危険性もあることなどが理由で、全ての生産物において実現できているわけではないことが現実にあります。
▼月山高原を耕す