どう考える硝酸態窒素
日本で生産されている野菜、特に葉菜類の硝酸イオン濃度は 比較的高い傾向にあります 人間にとって硝酸イオンは摂取する必要はなく 野菜中の硝酸イオン濃度を低く抑えることは、より安心であることは間違いないのは確かです。
また、硝酸イオンの野菜中への蓄積は肥料の過剰施用・過剰吸収が原因の一つとも考えられていますので これを低くする努力は施肥量の減少につながり 環境負荷低減にも貢献するものと思われています。
しかし、作物の生産量が低下したり、生産者の収益が低下することになれば生産者の生産意欲の減退につながります。品質の向上や単価の上昇などの市場価格も踏まえたものでなければ未来志向の問題解決にはならないわけです。
無理のない野菜栽培のために
硝酸態窒素は窒素が化学反応によって酸化したものであり、土の中など自然のあらゆる場所に存在します。農作物を栽培する時に肥料として使われることも多いです。
植物が成長するのに欠かせない栄養素の1つが窒素ですが、空気中に漂っているだけでは栄養素として取り込むことができません。植物は土の中で硝酸態窒素となったものを蓄え、必要な時に使うことで成長していきます。
しかし農作物を本格的に栽培しようと考えると、土の中の硝酸態窒素だけでは足りません。そこで過不足ないように栄養を補う方法として、いくつかの肥料を農作物に与えるのが一般的です。
過剰な肥料投入を避ける
ただし最近は安心安全な農作物を生産することに力を注いでいる農家が多く、過剰に肥料を与えることは避けられています。日本で流通している農作物は、基本、定められた基準をクリアしたものとなっています。
また硝酸態窒素は、ほんの少量を摂取する程度であれば心配の必要は無く、大量に摂取しない限りは健康への影響はほぼ無いとされています。
むしろ硝酸態窒素による健康被害を恐れるあまり、野菜を食べないという極端な選択肢を取る方が体に悪影響を及ぼします。野菜に多く含まれるビタミン類、食物繊維は人体にとって非常に重要で、いわゆるバランスの良い食生活を送っていれば健康被害のリスクは減少します。
作物の炭素率を高めると
農業で使用する有機質肥料に含まれる炭素と窒素の量を比率で表したものがC/N比(炭素率)です。 炭素(C)含有量を窒素(N)含有量で割って計算します。 C/N比は値が低いほど窒素含有量が多く、値が高くなると窒素含有量が少なくなります。C/N比の基準値は20~30で、それを境に高いか低いかを判断します。
C/N比が低い有機物は、堆肥として使ったときに肥料効果は高くなりますが、土壌改良効果はあまり期待できません。一方、C/N比が高い有機物は窒素含有量が少ないため、肥料効果は高くありません。しかし、微生物の活動が促進されて腐植が増えるため、土壌の改良効果は高いと言えます。
C/N比と肥料効果 土壌改良効果
C/N比(炭素率)は、有機物に含まれる炭素と窒素との比率を表す指標です。この数値を土作りの参考にすることで、圃場で栽培する作物に最適な土壌を準備できます。良質の堆肥や有機物を投入し土壌の炭素率を高め作物の炭素率を高めることは硝酸態窒素を抑える意味でも有効ではないでしょうか。
C/N比と堆肥の臭いの関係性はC/N比は実際に数値を計測しなくても、慣れれば臭いで判断することもできます。
C/N比が高い稲わらや落ち葉は肥化すると高品質の土壌改良剤になります。そして堆肥化しても強い臭いは発生しませんが、C/N比が低い豚糞や鶏糞を堆肥化すると、アンモニアガスが発生して強い悪臭を放ちます。堆肥化するには時間と時間が掛かります。そのままだとマイナスの効果を生み出してしまいます。
炭素率の高い野菜を収穫する
生育期間に日射量が十分とれた野菜は生育状態も良く作物に硝酸態窒素の残留はなく、作物の停滞が無く肥料が十分消化吸収され美味しい野菜になります。
このような野菜作りに欠かせないのが土作りです。炭素率の高い堆肥などの有機物を利用した土作りを実践する。そして土壌微生物の数量と種類を増やし多様性を作り出します。時間はかかりますがこの方法を地道に研究しています。
またアミノ酸などの葉面散布によって光合成を旺盛に同化力ためることで曇天でも光合成を活発化させ硝酸態窒素の昇華を促進することで炭素率を高める方法もあるようです。
窒素肥料は光合成のエネルギー
光合成窒素利用効率とは一般に、葉の窒素含量当たりの光合成能力を意味します。場合によっては植物の吸収窒素量当たりの個体光合成能力を意味することもあります。植物の葉の光合成能力は葉の窒素含量と非常に高い正の相関関係にあります。これは葉に分配される全窒素量の70%から80%が葉緑体の構成成分として利用されているからです。
しかし、同じ窒素量を有していても植物種が異なっているなど同種でも葉齢や生育環境の違いなどの要因によって光合成窒素利用や利用効率には差が生じます。この差は、葉緑体へ分配される窒素比が異なったり、光合成の各窒素成分の存在量比が異なったり、その成分量当たりの活性値に差があったりします。
一般に、C3植物といわれる小麦、大豆、菜種などはC4植物のトウモロコシ、サトウキビの光合成窒素より効率は高く、また樹木より草本の方が高いといわれます。また、イネやコムギなどの主要作物は高い傾向にあります。
▼月山高原を耕す