さくらんぼの霜害は脅威です
ここに数年温暖化による現象として晩霜(おそじも)の被害が多発しています。温暖化は作物の生育を早めます。毎年、開花が早まっていくことで霜害に会いやすい状況があります。山形県の果樹地帯はおいしい果物の条件として内陸盆地の温度格差が大きいというものが長所としてありますが、この反対側が遅霜という直接授粉障害をおこす、こわい自然現象になります。
桜(ソメイヨシノ)の開花は4月下旬頃が主になりますが、さくらんぼの開花は、桜の開花後1週間ほどの5月上旬頃になります。そんな花が咲く頃は「ぽかぽか陽気」が続き、気温も一気に上昇します。
▼さくらんぼの収穫からお届けまで
春が暖かくなり開花早まる
サクランボの開花前の4月上旬の蕾が膨らみだす頃、お天気は抜けるよう青空、しかし昼と夜の極端な寒暖の差で、夜半から朝方にかけて放射冷却で強い霜が降りることがあります。
この晩霜(おそじも)が降るということは、その年の豊作の善し悪しを決めてしまうものになりかねません。蕾が膨らみだすこの時期に強いでも霜が降りると、さくらんぼ・佐藤錦などの蕾が凍り、蕾が枯れてしまいます。霜害で枯れた花では受粉することはできません。
雌しべが凍って枯死する
晩霜(おそじも)が降りる危険性のある日の前日はJAなどから霜注意の屋外放送がながれます。しかしこれは自然現象です。現状の技術では防ぎようがありません。「焚き火などをして霜の被害を防ぐようにして下さい!」というアナウンスが流れます。夕方になると街宣車を出して注意を喚起したりします。
しかし、広いさくらんぼ畑の所どころに煙のたくさん出るようにした焚き木をおいて、霜災害に備える。霜が降りたとき夜中に出かけ焚き木1つ1つに火をつけて回るのです。地表を冷やさないように煙の層をつくるのです。これが防霜対策になります。
霜害の対策の実態
霜害の常習地帯と認識しているところでは、防霜ファンといって霜が降りそうな時に風を回して霜を防ぐ設備をしたりしています。中には最新の設備というので温風がでる防霜ファンを設備しているというところまであるのです。それでも万全ではありません。降霜の気温が氷点下5℃くらいの霜には歯が立たたない状況もあります。
また、こういった設備のない所では、注意深く「霜情報」などの天気予報を見守りながら降霜が始まる夜半過ぎに起きて準備を始めることになります。煙がでやすい焚火資材を利用し地表を霜から守るなど、出来る限りの対応策をしてサクランボを必死に守っているのが現状です。なかなか寝られない日が続きます。
さくらんぼ2021年の霜害
2021年の霜害は過去に類のない程の広範囲で深刻な被害をもたらし、この年のさくらんぼの生産量は9160トンと過去最低の水準でした。過去10年の平均が13800トン程度なので平年の70%にも満たない大凶作と悲惨な結果を残しました。
昨春の凍霜害が東北の果樹産地を直撃した。背景にあるのは、一見関係なさそうな温暖化だ。しかも、果樹に影響を与える温暖化はさらに強まる傾向にあり、サクランボの収穫量全国トップの山形県などが対策に乗り出している。気候変動に見舞われる果樹産地を守り切れるか。
「農業を始めて50年になるが、あれだけの被害は初めて。ガッカリだった」。山形県南陽市でサクランボやラフランス、リンゴなどを手がけるの高橋さんは、昨春をそう振り返る。
山形全域でさくらんぼ霜害
2021年はは4月に入って、10、11、14、27日と立て続けにサクランボ園に霜が降りた。寒さが和らぐ雪解けのあと、花芽が割れ始めるころを寒の戻りに襲われた。
雌しべがほぼ枯死し、実はほとんどならなかった。収穫量は例年の5%ほどで、得意客約100人に「今年は出せない」と泣く泣くはがきを送ったほどだ。
県内全体で見ても、昨年のサクランボの収穫量は前年比3割減で、25年ぶりに1万トンを下回った。西洋梨なども着果数が減り、農業被害は過去最大の約129億9千万円に上った。
霜害は雌しべが枯死する
霜害があった4月10日~11日、関係機関での調査があり13日山形新聞がこの霜害の状況を詳しく解説している記事を紹介します。「4月10~11日にかけて低温となった影響で霜が降り、サクランボの雌しべが凍って枯死する霜害が県内全域で発生したことが13日、県の調査で分かった。開花を控えたこの時季は最も被害に遭いやすく、枯死率が8割に上る園地もあった。県やJAは同日、主産地を回って被害状況を確認するとともに、今後の結実対策の徹底を呼び掛けた。」
「地域気象観測システム(アメダス)によると、10~11日の最低気温は山形で氷点下1度、東根で同3.5度だった。県の被害調査では、主力品種「佐藤錦」の枯死率は2~6割程度、より生育の早い県奨励品種「紅秀峰」は4~8割程度となっている。」
「サクランボのつぼみが膨らむ発芽期に霜が当たると、つぼみの中の雌しべが凍って枯死してしまい、実を付けなくなる。特に開花直前(佐藤錦の雌しべの長さ5~7ミリ)は霜に弱いとされる。県園芸農業研究所内で栽培している「佐藤錦」は4.3ミリ、「紅秀峰」は6.6ミリに達しており、最も危険な時期に入っているという。」
霜に当って雌しべが枯死したサクランボの蕾。黄色い雄蕊に囲まれるようにある雌しべが茶褐色になっている。これでは実がならないことになる。
被害のない残った実を生かす
13日は県やJAの担当者らが二手に分かれて天童、東根、寒河江、山形、上山、南陽の各市を回った。約70アールでサクランボを栽培している天童市川原子の生産者の園地では、山形県の高橋雅史県農林水産部長や金平芳己JAてんどう組合長らがつぼみの中の状態などを確認。広く被害が見つかった一方、木の上部などは被害が少ない傾向があった。
サクランボはつぼみを多く付けるため、全体の1~2割が結実すれば十分な着果量は確保できるという。高橋部長は「被害に遭わなかったものを生かすことが大切だ。結実対策の徹底をお願いしたい」、原田さんは「佐藤錦は半分ほど霜にやられた。今後も気温が低い日が出てくると思うので、対策をしっかりしたい」と話していた。
つぼみの状態を確認したサクランボの現地調査、霜に当たって雌しべが枯死したサクランボのつぼみ。黄色い雄しべに囲まれるようにある雌しべが茶褐色になっている
さくらんぼ被害130億円規模
県は10月27日、今春の凍霜害による農業被害額の確定値を発表した。総額は記録が残る1963(昭和38)年以降で最悪となる130億700万円に上り、被害はサクランボをはじめとする果樹を中心に30市町村に及びました。
県農林水産部によると、農作物の被害面積は約4201ヘクタール(被害額129億9300万円)。このうち、サクランボや西洋なし、リンゴなどの果樹が約4180ヘクタール(同129億4500万円)で大半を占め、被害の大部分はサクランボだった。スイカなどの野菜は約19ヘクタール(同3800万円)、アルストロメリアなどの花きは約1ヘクタール(同900万円)となった。森林関係では山形市でスギの苗木の被害が確認され、被害額は1400万円。
サクランボは雌しべが凍って枯死すると実を付けなくなる。今季の予想収穫量は平年比3割減の9500トン程度の見通しで、公表が始まった1996年以来、最低水準となっていいます。山形県は凍霜害や降ひょうの被害を受け、6月に各種支援事業をまとめた緊急対策パッケージを発表。支援メニューの強化・拡充を図りながら、生産者を支えている。
ふるさと納税など中止とする
さくらんぼの大幅な減収が見込まれ、ふるさと納税などのサイトにさくらんぼ販売中止の告知が出されました。
「本年度のさくらんぼの生育状況としまして、山形県内全域で低温・降霜の被害を受け、例年より大幅な収穫量の減少が見込まれております。このような状況から、誠に勝手ながら、本年度のさくらんぼ(佐藤錦・紅秀峰・大将錦すべて)の受付を終了させて頂きます」という緊急の表記が各サイトに掲載される事態になりました。
資料参考:山形県