オードヴィ庄内 すぐ日本海に
日本海に面して南北に約35キロメートルと、長さ日本一を誇る幅約3㎞の砂丘が続き、日本三大砂丘の一つといわれています。砂丘に生い茂る松原は300年前から防風林とて地元の人たちが弛まなく植林を続け育ててきました。
どこまでも続く日本海を望む砂浜のビーチが美しく続いています。その上に浮かんで見える鳥海山の眺めも見事。南端には「日本の夕陽百選」の一つに数えられる「湯野浜海岸」と、海沿いの温泉リゾート「湯野浜温泉」があります。
また、この湯の浜海岸では日本で初めて砂の海岸を歩くノルディック・ウォークの大会が開催された地としても知られています。ストックを手に歩けば、海岸線、砂丘、松林と、景色の変化を楽しめます。過去には給水所で名物の砂丘メロンが差し入れられたこともあったとか。緑のクロマツの林と青い海、砂浜のコントラストが綺麗です。
珍しい海沿いの酒蔵
海風をさえぎる松林に守られた砂丘地には、砂漠のオアシスのようなメロン畑が広がります。真夏の昼は足裏がヤケドするほどの高温になる一方で、夜は海からの風でグッと低温になります。この温度差が生み出す濃厚な甘さを生む「庄内砂丘メロン」は、夏に旬を迎えるメロンとして圧倒的な出荷量を誇る特産品になっています。
この砂丘農業を支える豊富で良質な地下水は古くから酒蔵を育ててきました。庄内砂丘を水源とする近隣の酒蔵は打ち寄せる日本海の白波に支えられ味わい豊かな美味しい日本酒の里として山形県酒田市と鶴岡市に掛けて続く庄内砂丘の松林の中にあります。
かつては清水が湧出して、幾筋もの流れとなって日本海に注ぎこんでいる。そんな光景が「オードヴィ庄内」が醸す「清泉川」の酒銘の由来である。「水は、敷地内から汲み上げる地下水。弱硬水で、春先より”秋上がり”の方が、ほど良く熟成しておいしい日本酒になるといいます。
オードヴィ庄内は明治8年に醤油、味噌の麹製造業より酒造業への転身。戦時中の米不足の際も途絶えることなく醸造し、現在まで続いています。その後、進取の気質に富んだ考え方によりフルーツワインや地域特産のメロンや柿そして砂丘の黒松を使ったリキュールも造るようになったのです。
社長の佐藤晴之さんの話
日本海・海辺の小さな酒蔵。目指すは究極の食中酒。全ての料理に合う酒が理想です。
オードヴィとはブランデーのフランスでの呼称。フランス語で「生命の水」を意味し、ブランデーが不老長寿の薬として錬金術たちによって開発された歴史を物語っています。
オードヴィ庄内の日本酒は歴史ある「清泉川」というブランドで販売しています。地元で出来る原料にこだわり、酒米は庄内でとれる「出羽燦々」「美山錦」「出羽の里」を使用しています。また、水については、創業明治8年当時から地下水(鳥海山の伏流水)を使っています。
お米を育てた水と、お酒を作る水も同じ山形の自然が育んだ水。命の水だからです。酒造りに澄んだ美しい水は欠かせません。つくりにとても適した水で、秋上がりにする仕上がりになります。やはり水はお酒にとって命ですから。この蔵の地下に流れている水も良好ですよ。ぜひ、当店自慢の日本酒をご賞味ください。
蔵自体はあまり大きくありませんが、お客様に伝わるものを、という思いで、手造りにこだわりながら丁寧に醸しています。
命の水オードヴィの酒造り
「オードヴィ庄内」という社名は晴之社長が名付けました。日本酒以外にも地元で出来る特産品、メロン、イチゴ、柿、和梨などを使ったワインやリキュールにも積極的に乗り出すことで特長を活かしたいという地元愛があったからです。人気商品は、清泉川シリーズの「金の蔵」「銀の蔵」の2種類です。金の蔵は大吟醸で、香と味のバランスを巡視しています。
銀の蔵は出羽燦々をつかって、酵母は山形酵母、麹菌も山形のもの、と全て山形県産のもので作った酒です。味的にはまろやかで飲みやすく、のどごしも良いタイプです。詳しくは、商品紹介「蔵シリーズ」をご覧ください。目指すは、究極の食中酒。 飲み飽きしない、どんな料理にでも合うお酒、清泉川は地の食材とぴったり寄り添っている印象に見えます。
清泉川の目指すのは究極の食中酒。ごはんと一緒に飲んでも飲み飽きしない、全ての料理に合う酒が理想。季節ごとの地元の豊富な魚介類にうちの酒は良く合います。春は地元の赤川に遡上するサクラマス、夏は岩牡蠣、冬は寒鱈にハタハタなどには抜群の相性といえます。
この蔵の酒造りに胸を張るのは、後継者の佐藤宅真常務。蔵に入って酒造りに精を出す蔵人としての誇りを感じます。小さな蔵なので全て手作業に徹底して差別化を図る思想を感じます。もうひとつ地元の食にこだわって地のモノに寄り添う酒造りの蔵には魅力がいっぱいあります。
小説「砂の女」の舞台庄内砂丘
庄内砂丘の中にあるオードヴィ庄内のある酒田市浜中地区は安部公房の小説「砂の女」の舞台でもあります。海から吹く強い風、家を侵食する砂、波打つ海面、弓なりに続く砂浜…小説のインスピレーションが湧きそうな光景です。
それは、冬の強い季節風から農地を守るため300年ほど前からクロマツが植林されて、庄内平野の稲作を守ってきた経緯があり、砂丘全体が防風林になっているからなのです。
実はこの庄内砂丘では砂と強風による被害から住民や田畑を守るため植林が300年前から続けられてきました。今では立派な暴風林に守られて砂漠のような草木の生えない荒れ地が砂丘のうちに変わっています。「砂の女」 安部公房著
砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める村の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のうちに、人間存在の極限の姿を追求した長編。20数ヶ国語に翻訳されている。読売文学賞受賞作。
(1924-1993)東京生れ。東京大学医学部卒。1951(昭和26)年「壁」で芥川賞を受賞。1962年に発表した『砂の女』は読売文学賞を受賞したほか、フランスでは最優秀外国文学賞を受賞。その他、戯曲「友達」で谷崎潤一郎賞、『緑色のストッキング』で読売文学賞を受賞するなど、受賞多数。1973年より演劇集団「安部公房スタジオ」を結成、独自の演劇活動でも知られる。海外での評価も極めて高く、1992(平成4)年にはアメリカ芸術科学アカデミー名誉会員に。1993年急性心不全で急逝。