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ばっちゃん物語

■溺れても網を放さないのは権太のど根性だ!

◆◆ ばっちゃん物語  第25話 ≪ばっちゃん子供頃のお話し≫ ◆◆
 

■溺れても網を放さない権太のど根性

トコちゃんの大きいお兄ちゃん源吾が権太を助け上げたとき

驚かされたことがあります。

権太は船戸の渕で溺れて流されても魚の入った網を

しっかり握って離さなかったため源吾が助けたとき

網には大きなナマズが2匹入ったままでした。

これを見て源吾はこの子にある意味の親しみを感じたのです。

助け上げたときすぐに水を吐き出させようとしましたが

それでもザッコ網を手から離さないのには呆れました。

源吾は無理やり網を手から離して、うつぶせにして

身体をゆすりました。

すると飲んだ水ばかりか胃袋に入ったものすべてを

吐き出すと、息を吹き返しようやく気がついたのでした。

「大丈夫だがあ」と声をかけると「うーん・・・」

とうなずき頭を垂れました。

それでも、ザッコ網を手に取ろうともがくのを見て

「心配すんなあ、もっていぐがら」

このザッコ網は権太にとって宝物でした。

自分で何度も作っては失敗して幾度となく作り直した代物

誰の網より大きく頑丈な優れモノでした。

この網を使って船戸のどでかい魚を獲るのが
何よりの夢でした。

源吾は網に入っているナマズを権太の木のイケスに入れると

イケスとザッコ網を背中にくくりつけ

権太を抱きかかえて歩きだしました。

身体が小さい割に権太は重いのには閉口しましたが

何度も腕を入れ替えながら権太の家を目指しました。

小さなこの子が、自分の背丈の2倍もあるザッコ網を持って

船戸の渕に入るなんて到底出来ることではなかったのです。

無謀というか勇敢というか権太の無茶なところに

源吾は自分の小さいころが重ってみえました。

自分も船戸で密漁したことがあったからです。

それほど自分も子供のころからあこがれた船戸の渕

幾度となく危ない目にあいながら密猟してきて

今では、目隠ししても何処にどんな魚がいるか

知りつくしていると自負しているかほど

魅力的な猟場なのです。

でも権太より1歳年長になってからだから

この子の勝気さに驚きというより呆れてしまいます。

同じころの源吾はもっと背も高く大柄だったけど

権太は体格は良い方だが背丈はそれほどでもないのだから。

よくも、背もたたないところで、潜ってあの大きな網を操って

ナマズを獲ったことを思うと無謀としか思えなかったのです。

その無謀さに源吾は愛着を感じていたのです。

 

続く・・・。


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