◆◆ ばっちゃん物語 第9話◆◆
■ 冬の楽しみ藁の入ったベッド
山形のばっちゃん、小学生の頃のお話です。
農家はどこの家も萱ぶき屋根のころのお話ですから、今とはずいぶん違います。
玄関んがあって内戸を開けると牛や馬がまずお出迎え、子牛も入れて2-3頭が飼えるような
厩がありその奥に広い土間。ここでは主に冬のワラ仕事をします。
自家製の味噌の樽を置いたり、ここで自家製の納豆も作ります。
雪が降り始める厳しい冬はワラ縄を作るために藁を梳(す)く作業が始まります。
そのワラ梳きでうまれるコモジ(ワラくず)は大切な越冬用の布団になります。
今でいうマットレスというような布団の下にもう一枚敷いて断熱、保温してくれる
ふかふかのワラのマットレスはすぐれものでした。
赤いほっぺたの女の子は、このワラ屑でふかふかになったコモジ布団が大好き。
これはお父ちゃんが作ってくれました。
できたての布団の上で何度お母ちゃんに叱られても飛んだり跳ねたり
その弾力を楽しむのをやめられません。
こころもウキウキです。
西洋のベッドというのはこういうものをいうのだろうかと想像を膨らませるのでした。
そして、それが嬉しくて、嬉しくてたまりません。
毎晩寝る前、この感触を確かめるように飛び跳ねて遊ぶのです。
しかし、何ヶ月か経過してみると、あれほど分厚くふかふかだったコモジ布団も
雪が解ける春になるころにはもう弾力も無くなってベッドという
イメージも湧かなくなってしまいます。
たまに布団をみるたびに、あれほどふかふかだったベッドが弾力を無くしてぺったんこ
ただの布団に逆もどり過去の現実が不思議でたまりませんでした。
冬は外の仕事はあまり出来ません。ワラ仕事が主な仕事でした。
おじいちゃん、お父ちゃんはもっぱらワラ仕事、縄を作り、草履の造り、
冬のワラ靴も自家製です。
おばあちゃんやお母ちゃんは味噌作り、納豆作り、味噌を作るときの麹づくりもしていました。
家の中の作業のお手伝いもいっぱいします。お母ちゃんといっしょに
できるお手伝いだから大好きでした。
冬と吹雪は一層厳しくなるのでしたが、冬は冬の楽しみがあって赤いほっぺたの女の子は
みんなに愛されて、温かいワラのベッドに包まれて
すくすく育っていくのでした。
(続く・・・。)