◆◆ 山形のばっちゃん物語 第7話◆◆
■冬の食べものといえば・・・
ばっちゃんが小学校の頃の冬の食べものといえば粗末なものばかり。
もちろん、戦時中ということもあって、まさにモノのない時代なのですから
当然といえば当然ですが。吹雪になれば1週間も外出できないこともあるわけなので
漬物などの保存食が主な食料です。
秋に仕込んだ野菜の漬物、自家製の納豆、時にはハタハタの塩漬けしたものや
ションビキ(塩引き鮭)はたいそうなご馳走として夕食に出されていました。
身欠きにしんや目刺し、カラカイ(エイの干したもの)などもありました。
みそ汁の具は、芋ガラ(里いもの茎を干したもの)や菜っ葉の漬物を塩蔵したものを水でもどしたものが多かった。
幸いだったのは、お米だけはコメどころの農家だったのでめいっぱい食べることが出来たこと。
反面、その頃の食事の仕方というのは、少ない量の塩辛いオカズで
沢山のごはんを食べるのが常だったのです。
お正月を過ぎるとお餅もよく食べました。お雑煮、しょうゆ餅、納豆餅、お砂糖の入ったきな粉餅
は甘くてみんな大好きな食べ方でしたがお砂糖はぜいたく品でめったに食べられません。
戦争が激しくなって特に甘いものも、砂糖がない時代でしたから
食べ物の楽しみは自家製のものでした。
お母ちゃんは、時折あられを焼いてくれました。
これはもち米で作った少し甘いあられで、人工甘味料や砂糖入りだったこともあって大好物。
思い出してはお母ちゃんにねだります。
焼くのは炭火であられ焼器という金網で出来た道具を金物屋から手に入れていました。
焼く前のあられを1斗缶から取り出して、そのあられ焼器で焼いてくれるのでした。
焼きたてのふっくらしたアツアツを食べるのが何よりの楽しみな時間だったのです。
その度に、「お母ちゃんは魔法を使っておやつを作る魔法使い」に見えてく。
不思議で不思議でたまらない、美味しく楽しい時間がありました。
気がつくと続いていた吹雪が止み、雲の合間から陽が差し込んで雪に反射してまぶしい明るさ
雪が今までと違って輝くような土曜日の午後ことです。
(続く・・・。)