サクランボの生産量と気候変動
トルコ共和国では2024年度のサクランボの総生産量を90万トン、そのうち71万8千トンが甘果オウトウ、１8万2千トンが酸果オウトウであると予測しています。
トルコ統計局によると（TurkStatTurkStat）の当初の年間見通し（2023年5月時点）は、24年度の甘果オウトウの生産量を、23年度の推計値65万6 041トンに対して18.6％増の77万8 065トンという結果でした。
主要産地では総じて収穫量を増やすのに十分な雨が降り、今年は霜害がなかったなど。生産者にとって今シーズンの唯一の課題は、春の気温の上昇が遅く、収穫が遅れたことが、大きく影響してきました。
このように、いま世界規模ですでに始まっている温暖化による気象変動の問題は世界的に農業、食糧の問題だけにとどまらず、どの国にとっても国家戦略に大きな影響があることを示しています。
サクランボ等の嗜好品といわれるフルーツでも生産量の安定とは反対のリスクが生産者を苦しめていることはトルコもほかの生産国も同様です。
さくらんぼ発祥地ギレスン市は黒海の温暖で自然豊かな地
オウトウは桜桃と書きさくらんぼ
ここで使っているオウトウ（桜桃）とはさくらんぼのことです。日本でも生産者や生産地ではサクランボのことを桜桃と呼びます。特に山形で生産者は桜桃と呼んでいるのが通常です。厳密にいうと、オウトウとはさくらんぼの木ことを指し、サクランボの果樹を一般に桜桃（おうとう）と呼んでいます。
ジャムやリキュール、ドライフルーツ、フルーツソースなどの加工用に使うサクランボである酸果オウトウの生産量は、トルコの近年の水準（過去10年間の平均は約18万3千トン）と同程度にとどまり横ばい状態となりました。
ちなみに、日本のさくらんぼ生産についての同様な気候変動が生産量に影響しているといえます。近年の遅霜による被害の増大や、旱魃とか大雨によるサクランボやその他の農産物に対する被害は大きくなっているように見えます。
トルコでは新鮮なサクランボが市場で売られている
トルコのインフレ経済とサクランボ生産
近年、深刻な食料インフレがトルコ経済を揺るがしたにもかかわらず、収穫量の増加により、今年のトルコリラ（TL）で表した甘果オウトウの価格は横ばいです。甘果オウトウの小売価格は、50〜90TL（185〜333米ドル kgの範囲で推移。酸果オウトウの小売価格は、約70〜90TL（259〜333米ドル kgです。
通貨単位は新トルコリラ（YTL）。 トルコで一番通用する外貨はUSドル。 日本円の現金も現地で両替できますが、地方都市ではUSドルかユーロが一般的です。現在の米ドルの為替レートが昨年のこの時期よりも50％高いため、甘果オウトウ及び酸果オウトウの米ドル表示の価格は昨年よりも低くなっています。
投入資材の価格は、外貨に対するトルコ通貨の弱さとトルコ国内のハイパーインフレにより急激に上昇しています。2022年3月から2023年3月の間に、肥料の価格は約20％、農薬の価格は約35％、エネルギーの価格は約115％上昇しました。
2023年3月から2023年8月の間の為替レートの急激な上昇により、肥料価格はさらに42％上昇し、燃料価格は約50％上昇した。生産者は、急速に上昇する投入資材価格に追いつくのに苦労しています。
トルコさくらんぼの輸出量と輸出額
トルコさくらんぼの強い輸出需要とは
近年の強い輸出需要が、サクランボ生産の増加の原動力となっています。トルコは、新しい栽培品種、台木、誘引システム及び栽培技術を使用した近代的で高密度の果樹園の開発等、伝統的なサクランボ生産から現代的なサクランボ生産にゆっくりと移行しています。
しかし、ほとんどのサクランボ生産は、家族経営の農場が運営する農地で、主に伝統的な方法で行われている状況があります。季節労働者と家族経営農場の比較的安価な労働力が、安定的で安価な労働力供給という利点を提供している状況が見られます。
輸出市場の成長により、トルコの甘果オウトウの生産量は2014年度から2023年度の間に24％増加しました。これはトルコ政府の積極的な品種改良が進んで、生産者が品種の更新に投資してきたことがあげられます。その結果としてサクランボの品質が向上して、生産量も良くなりました。
今まで以上に、輸出市場の仕様に合致した、より高品質なサクランボの生産の増加は、国内市場向けのサクランボの品質の向上にも役立った。一方、加工用のサクランボ、酸果オウトウは主にトルコの果汁・ジャム産業で使用され、その生産量は横ばい状況にあります。
トルコのさくらんぼは料理から加工用、生鮮さくらんぼと多様だ
サクランボのトルコ国内消費
トルコでは、原産国、発祥の地を象徴するように100品種以上のサクランボがさまざまな形で消費されています。国内では、トルコで生産される生食サクランボの甘果オウトウの半分以上が生鮮で消費されています。
そして、すべてのサクランボ生産量の約20％は、加工部門で缶詰製品、マーマレード、冷凍果実、果汁の製造に使用されることになります。大部分の加工品は加工用のサクランボ、酸果オウトウから製造されます。
また、2024年度のトルコのサクランボ国内消費量は、前年と比較して4万8100トン多い約82万3千トンと推定されます。ちなみに、日本のさくらんぼ全生産量は約1万8000トン程度ですから、トルコの国内消費量の50分の1程度となります。また、山形県のさくらんぼ生産量は1万3000トン程度です。
トルコのさくらんぼ輸出は需要が強く堅調に推移
トルコのサクランボの貿易政策
トルコは年間25万トン以上のサクランボ、桃、スモモ核果類を輸出しており、その大部分はＥＵとロシアに出荷されています。サクランボ、モモなどの輸出国はトルコのほかには、チリ、米国、イランなどが世界の主要輸出国になります。
トルコの輸出業者は、南アジアと東アジアでの核果類の輸出機会の拡大を模索し続けています。トルコの生鮮サクランボの輸出量は、生産量の減少により過去2年減少しました。
しかし、2024年度のトルコの生鮮サクランボの輸出量を、生産量の増加とＥＵ諸国からの安定した需要により、2023年度の輸出量5万8千トンより約33％多い7万7千トンと推定されています。
トルコは世界最大の核果類（モモ、スモモ、プルーン等を含む）輸出国の１つであり、年間25万トン以上を輸出しており、その大部分はＥＵとロシアに出荷されている。近年、トルコの輸出業者は、極東、特に韓国でも核果類（サクランボ等）の販売機会を探っていいます。
サクランボは分類上、生食用の甘いサクランボを甘果オウトウ。酸っぱくて加工用になる酸果オウトウに分けられます。オウトウ（桜桃）とはサクランボの果樹のことを指し日本では生産者はかつてから桜桃とさくらんぼの木のことを呼んでいます。
トルコのさくらんぼ生産量は世界でトップクラスの約90万トン
トルコサクランボの販売戦略
近年、トルコでは生食さくらんぼの甘果オウトウの生産量と販売量がかなり増加しました。トルコでは、サクランボなどのマーケティングに精通した企業の数が増加し、冷蔵倉庫や追加の梱包施設が充実しつつあり、輸出への積極的な投資が増えていることがあげられます。
また、生産者は、輸出市場で求められる甘果オウトウの品種を生産できるように生産技術、市場動向にも敏感になりました。サクランボなど生鮮品に関する輸出市場や規制を熟知している市場志向の企業も増えています。
また、トルコ政府は、輸出市場向けの高品質な甘果オウトウを生産するために、古い甘果オウトウ果樹園を改植する生産者に補助金を支給しています。
甘果オウトウ（生食用の甘いサクランボ）に関しては、国内消費と嗜好は長年にわたって同様の水準にとどまっているが、生食サクランボの甘果オウトウの輸出は適切なマーケティング戦略により、生産者の生産意欲高まり生産量が増加を続けています。
トルコの地中海沿岸部から内陸部へと収穫期が移動する
サクランボ輸出からトルコ農業政策
安定した輸出需要と政府の支援により、トルコの生産者は核果類（サクランボや桃、スモモなど）の新しい果樹園に投資することができました。トルコ農林省の農業者登録制度に登録した生産者には今までの投資に対する支払いが残っていまが生産者の生産意欲は高いままです。
トルコ農林省は、2023年に果樹園を設置するために村に戻る農民に対する補助プログラムを発表しました。プログラムによると、資格を満たす生産者は、3万ＴＬ（1667米ドル）の補助金と10万ＴＬ（5556米ドル）の融資を得ることができるとしています。
詳細については、トルコ農林省のウェブサイトに発表しています。今後もトルコのサクランボの輸出に対する投資は積極的で、EUやロシアなどに輸出が続いていくことを示しています。
同省はまた、引き続き、燃料と肥料、認定された標準苗木、有機農業、及びサンプル分析について支援を行っています。このプログラムは、より高品質の果樹が確実に植えられるようにするため、政府認定の矮性苗木を購入する生産者の投資を支援する仕組みがあります。
矮性苗木とは果樹の背丈を低く抑え、収穫などの作業性を高めるために利用するもので、通常は単位面積当たり多くの本数を植えて、生産量を確保します。
トルコ共和国はまた、電子商取引、見本市への参加、市場調査の実施などへの補助金の提供等さまざまな輸出プログラムを通じて果汁輸出業者に助成金を支給し、前向きな姿勢を示しています。この件に関する詳細について、貿易省のウェブサイトに掲載しています。
出典：（公財）中央果実協会、ターキッシュエア＆トラベル（TURKISH Air＆Travel）他
