世界のさくらんぼ生産状況
さくらんぼ(甘果おうとう)の原生地は、小アジア~カスピ海・黒海沿岸地方と考えられており、紀元前1世紀にローマにもたらされた後、ヨーロッパ各地に広まり、日本へは明治初期にアメリカから導入されました。
現在、生産量が最も多いのは原生地にも近いトルコで約64万トン(日本の約35倍)にのぼり、アメリカ、ウズベキスタンが続いている。日本の生産量は約1万8千トンで、世界では格段に低い数で22位となっています。
さくらんぼ日本一への道のり
明治になって1875年に内務省勧業寮からは全国各県にもさくらんぼは配布され、どの県もさくらんぼやほかの果樹の育成に挑戦しましたが、山形県以外の地域ではうまく育たず定着しませんでした。
山形県の気象条件や土壌条件等が非常に適していたとも言われています。この他にも「佐藤錦」に代表される品種開発や雨よけ栽培などの技術開発など、先人達のたゆまぬ努力により日本一のさくらんぼ産地を築いてきました。
特に、根の浅い性質がある桜桃は台風には弱かったようです。山形県では産地である内陸部は山々に囲まれた立地条件に恵まれ風水害は他の地域と比較して少なかったことがあります。
また、気象条件としては内陸部の盆地気候特有の梅雨期に雨が少ないことはさくらんぼ栽培には決定的な違いを生み出していたのです。さくらんぼの収穫期は6月、7月の梅雨時期、この時期に雨に降られたさくらんぼは実割れして、腐るなどで販売できなくなるのです。
▲さくらんぼの収穫作業動画
さくらんぼ日本の生産量
日本国内のさくらんぼの生産量は、ここ10年間平均で、18,300t程度です。山形県では、日本全体の約4分の3にあたる13,800t程度のさくらんぼの生産をしており、日本一のさくらんぼ産地となっています。
生食専用の品種、佐藤錦の特長は、見た目がきれいな鮮紅色で光沢もあること。甘みが多く、果皮が比較的厚くて遠地輸送にも耐え、さらに収量が安定していることなどです。
さくらんぼの分類から
サクランボの実がなる木は大きく3つに分けられます。
1、西洋実桜(セイヨウミザクラ) 別名:甘果桜桃(かんかおうとう)
2、西洋酸実桜(セイヨウスミノミザクラ) 別名:酸果桜桃(さんかおうとう)
3、支那実桜(シナノミザクラ) 別名:中国桜桃(ちゅうごくおうとう)
日本で育てられているサクランボの実がなる木は、ほとんどがセイヨウミザクラ(西洋実桜)になります。
日本で栽培されている生食用のさくらんぼのほとんどは、甘果おうとう(セイヨウミザクラ Prunus avium)に分類され、アメリカやヨーロッパから輸入されました。他に酸味の強い加工用の酸果おうとう(スミミザクラPrunus cerasus)などがあります。
さくらんぼの品種から
世界全体では1,300品種以上のさくらんぼが栽培されていると言われています。日本ではそのうちの30品種ほどが栽培されており、そのほとんどが山形県でも栽培されています。
山形県では佐藤錦、紅秀峰、紅さやか、紅てまり、紅きらり、紅ゆたか、ナポレオン、南陽、大将錦、月山錦など約30種類が栽培されています。
さくらんぼの品種には、次のような種類があります。
佐藤錦:皮が薄く甘みがあり人気、生食用さくらんぼの代表、
紅秀峰:甘みが強く実がプリッとしていて食べるとはじけるようなおいしさ
紅さやか:極早生サクランボの代表品種、ナポレオンに変わり、佐藤錦との交配に良いと増加している。
高砂:佐藤錦より早い早生品種、佐藤錦より古い時代から活躍しているサクランボ
ナポレオン:甘みも酸味もある。佐藤錦の交配に欠かせない品種
月山錦:黄色いさくらんぼ、めったに出回らない希少品種
佐藤錦の生産量はどれほどか
山形県でのさくらんぼ生産量は最近の10年をならすと約13500tあまりあります。この生産量の約70%が佐藤錦になりますから少なくみても9000tの佐藤錦が生産され消費される計算です。
加工用から生食用への転換となったのは佐藤錦の誕生と雨除けハウスの登場そして宅配便による物流の変革にあります。とにかく美味しいサクランボとして魅力を発揮する新品種「佐藤錦」の登場と「鮮度がいのち」である生鮮食料品を全国にスピーディーに配達するヤマト運輸の「宅急便」(昭和51年)などの物流の改革も誕生も佐藤錦の誕生とが生食用に移行する大きな要因として見逃す事はできません。
生食用のさくらんぼはその日の早朝に収穫し当日にお届け先に発送し、翌日にはお客様のお手元に届くシステムです。宅配便などが出来る前はと言えば、個人のお宅に配送できるシステムはなく、配送に1週間かけて国鉄などの小荷物で駅まで取りに行くような気の長い方法しかなっかたのです。
雨除けハウスの技術革新
収穫が近づくとさくらんぼの実は水にとても弱く、雨に当たると果皮に亀裂が生じ割れてしまいます。これを「裂果」と言います。
その実割れを防止するために昭和46年頃に雨からサクランボを守る雨よけテントが開発され、昭和の後半から広く普及し始めました。また、土壌中の水分や空気中の湿気の影響により実が割れてしまうことがあり、生産者は水分の管理に非常に気を使います。
例年、色付きの始まる5月下旬から6月上旬に、雨よけテントのビニールかけを行っています。緑広がる果樹園地帯に、一斉にビニールが広がっていく雨除けハウスの景色は山形県独自のこの季節の風物詩といえます。きっと他の地方では見られない景色としてサクランボの季節の到来を知らせる異彩としてみることができます。
さくらんぼ生産に欠かせない労働力
山形県を代表する農産物「さくらんぼ」は、収穫やパック詰め等の作業が短期に集中することから、収穫に関わる各所で労働力不足が問題となっています。
6月~7月に集中する収穫から発送までの各段階で一斉に労働力のニーズが沸騰するので、一般的な労働者不足に加えて、この時期の騒動不足はさくらんぼに関わる大きな問題になっています。
そこで、県では、関係機関一体となって、「さくらんぼ労働力確保対策ワーキングチーム」を立ち上げ、地域のさくらんぼ農家をお手伝いしてくれる応援団(アルバイトやボランティア)やさくらんぼ産地サポーター企業を募集する取組みを行っています。
参考:山形県県政情報、農林水産部 園芸大国推進課資料ほか