傘に入れないサクランボ
さくらんぼ生産者にお聞きすると露地サクランボが数本ある。というお話が時々耳にします。露地サクランボとは雨除けハウスの設備がないサクランボのことです。何本かがまとまった畑から離れているとか、雨除けハウスが架けられない傾斜地とか。中途半端な畑にみられるようです。
このような環境のサクランボは産地全体からすると結構な面積になります。そして雨除けハウスのサクランボが出回る前に、収穫され市場に出回ります。その数量は正確な集計がなく把握できませんが、1週間くらいの期間に一定量出回ります。雨除け」ハウスの設置率が全体の88%といわれますから、全体の12%のさくらんぼが露地さくらんぼになります。
天童、東根のサクランボ主産地は中でも全体からすると出回りが早いほうの地域なのですが、露地のサクランボが6月上旬頃から収穫が始まってきます。雨除けハウスのさくらんぼより収穫が早くなる傾向があります。
露地さくらんぼには訳がある
雨除けハウス設備がないものを通常露地モノさくらんぼと呼んでいますが、正確にはわかりませんが、産地全体からするとかなりの面積があるものと思われます。出回りは短く1週間くらいで終わります。
理由としては色々あるようです。これから頃合いをみて雨除けハウスにするが、まだサクランボの樹が若いのでまだ雨除けハウスを設備していない場合。会社務めが忙しいので雨除けハウスをしてまで取り組む気はない場合。
また、さくらんの畑の形状が設備するには狭すぎる。とか、道路と隣接して設備ができない。とか、昔から受け継いだだけのサクランボなので、土日に家族の労働だけで収穫して集荷するだけでさくらんぼに設備して取組むほどではない。などがあります。
中でも多いのは、高齢なので設備投資したくないという方です。その中でも多くはお勤めが忙しく年老いた夫婦がもったいないといってサクランボを育てているので、サクランボの収入など多くを望んでいない方も多いのではと想像されます。
後継者がないサクランボ農家も
やはり、さくらんぼの大産地だけあって雨除けハウスがなくても「もったいない精神」で後継者のいない高齢者の農家の方々が、剪定や最小限の手入れをして防除だけをして天気をみながらサクランボを収穫するケースがけっこう見られます。生産者の年齢が高齢化しているんだなあと感じるときです。
サクランボ農家だからと言って、全部が雨除けハウスの設備があるわけではありません。実のまだたくさん成らない若い樹もあるわけで、そんな畑は何年か後に設備をするにしても、雨除けハウスの畑の収穫に入る前に「露地サクランボ」として収穫してしまうわけです。
そしてまた、品種によってもこの時期に出回るのは、佐藤錦の授粉樹として植えられてある品種の中でも早生のもの。紅さやか、高砂、正光錦、香夏錦などは受粉樹として雨除けハウス内にあっても露地モノのこの時期に収穫され出荷されます。
さくらんぼの旬のハシリはそこそこの値段も付くので、佐藤錦以外の授粉中でひと稼ぎできればと、朝早くから収穫にはりきって出かけます。
雨の降る前に収穫を急ぐ
このようにして生産された露地モノサクランボは市場やJAに出荷され全国の市場向けに出荷されたり、地元の産直市場で、格安商品で出回ったり、中でも品質の良いものもありますから、そのような品質のサクランボはギフト用に回される場合もあるわけです。
この頃に出回るさくらんぼは全般に色着きはまだまだ不十分でしたが、週末に雨マークが出ましたから雨による実割れを心配して必死に収穫していました。そんな天気予報をみて雨の前ともなるとJAや市場には露地のサクランボが大量にに出荷されます。
これらは主に量販店むけに小さい200gパックに詰められ各市場に出荷されます。品種は紅さやか、高砂、正光錦、香夏錦、佐藤錦などです。この露地物のサクランボは例年ですと梅雨の雨に降られることが多く実割れ色付きが不十分で品質に問題が生じることもあります。
サクランボのハシリは高値で
サクランボシーズンが始まるこのハシリの時期に品質の良くないサクランボが市場に出回ることは産地山形の面目として困りごとと捉えているようです。山形県としても生産者団体や市場などに品質を強化するように規制して問題解決を図ろうとしていますが、全国で引き合いの強い人気商品だけに、なかなか行き届いていないという現実があるようです。
しかし、現状を見る限りでは今年の露地モノのサクランボは佐藤錦を中心に品質的に悪くないようです。雨除けハウスの施設のあるサクランボは6月中旬から収穫が始まりそうです。販売業者としては、準備もありますので6月20日頃から始めたいところですが、サクランボの熟れ具合を視ながらお天気と生産者の状況次第では、前倒しせざるを得ないかもしれません。
「過去20数年サクランボを観てきた中でも早い旬の到来」と言うサクランボ流通の関係者の声を聞くことができました。
▼収穫直前のさくらんぼ畑から
露地さくらんぼの収穫 まとめ
露地モノさくらんぼが出回るのは6月15日前後です。雨除けハウスさくらんぼが出はじめる1週間前からお天気を見て雨の予報を視て短期間に収穫します。品質、大きさ(粒)もワンランク下がりますが、ハシリという事でそれなりの市場価格になります。ギフトには向きませんが、量販店向けに小別けのパックで販売されているようです。
山形さくらんぼの旬はだんだんはっきりしなくなってきています。4月から温室の早出しサクランボが出回りはじめ6月上旬まで収穫が続きます。もちろん母の日のギフト用のサクランボとして大きな需要期があるので母の日に集中して出回りは多くなっていますが、品薄の時期に高値になったりすると自ずと6月の父の日頃まで温室サクランボが出回るようになってきました。
以前だと露地モノが出回る前にサクランボの出荷は無くなる時期がありましたが、今では露地モノサクランボと温室サクランボの終わりが重なり合って品薄にはなってもさくらんぼの出回りは止まることはなくなってきました。
山形さくらんぼの旬は品種の改良や温暖化も手伝ってか6月下旬から7月上旬ではなく、4月から7月下旬まで約4ヶ月間に広がってきています。