くだもの果樹園のお花見
サクラ(ソメイヨシノ)の満開が終わるころ、果樹園のさくらんぼの花が徐々に満開を迎えます。山形県の桜は満開から葉桜へと姿を変え、お花見の舞台は「果樹園の花々」へと移り変わります。
山形県ではソメイヨシノが4月中旬に満開になり、約1週間後にサクランボ、桃、ラ・フランスの花の開花がはじまります。サクランボの花が終わる5月上旬にはリンゴの花も満開になって来ます。
それぞれの花は1週間ほど咲き誇り、4月下旬から5月上旬まで様々な果物の花を楽しむことができます。この時期、長く寒い季節風が収まった山形県の春の景色が一斉に輝きだします。雪を抱いた月山(がっさん)や蔵王、葉山、飯豊連峰、朝日連峰を背景に山形の果樹地帯の村山盆地は桃源郷を想わせる景色に変貌していきます。
実はこの季節は、果樹栽培にとって開花、満開、授粉交配と大切な時期。お花見日和の穏やかな20度前後の天候は、フルーツ王国山形県を代表する果物にとって、豊作を導いてくれる欠かせない要素なのです。
サクランボの花は妖艶
サクランボの花びらは「真っ白」な色をしています。果樹園を埋めつくすサクランボの花が満開を迎えたときの姿は、実に妖艶です。ほのかにサクランボの甘い香りも漂っています。
サクランボの花は4月下旬頃に咲き始めます。サクランボの品種別に観てみると、次の順に満開を迎えます。
(1)紅さやか
(2)紅秀峰(べにしゅうほう)
(3)正光錦(せいこうにしき)
(4)佐藤錦(さとうにしき)
(5)紅てまり、紅夢鷹など
※地域とその年の天候により違ってきます。
桜と同じように、サクランボの花も地域により早咲き、遅咲きがあり、東根(ひがしね)や天童(てんどう)、上山(かみやま)などの果物産地でも地域により異なります。つまり、この頃の山形県ではあちこちで、様々な果物の花が百花繚乱する「果樹園の風景」を楽しむことができるのです。
ラフランスの花は可憐
サクランボの花と同時に咲くのは「ラフランス(西洋なし)」の花。ラフランスの花も白い花ですが、サクランボの花に比べ、微妙なクリーム色にも見えます。
この年はさくらんぼより少し早く満開を迎えたラフランスの花ですが、ラ・フランスの栽培上、満開のときに摘果(間引き)をしてしまいますから必要な果実の個数を想定して残りは全て取除くことになります。
この栽培上の事情からラフランスの花は満開と同時に花を取除くので、満開で白い花が乱れ咲いて賑やかな園地の景色は、花が摘みとられると後の景色は少しさびしい感じになります。
1本の樹にどれだけの実の数を着けるのか、どれくらいの大きさのラフランスの実を着けたらいいのかを想定した栽培上の大切な作業です。
桃の花は艶やかでピンク
サクランボの花、ラフランスの花と同時期に開花するのが桃の花。写真は黄桃の花でピンクの艶やかな色。ヒラヒラとした花びらの繊細な形が特徴です。観賞用ハナモモと果物の「桃の花は」少し違います。果物の桃の花は、季節風を遮るため「暴風ネット」に覆われている畑も多く、華やかさという面では桜(ソメイヨシノ)とは違います。
艶やかなピンク色の桃の花ですが、川中島などの品種で知られる白桃(はくとう)は薄いピンク色なのに、黄金桃などの黄桃(おうとう)は白桃に比べると濃いピンク色の花を着ける特徴があります。
花の咲いている期間は1週間くらいですが、桃も満開時に果実を一定の大きさに肥大させることを想定しているため、花のうちの8割程、摘み取ってしまいます。摘み取った後の畑はちょっとさびしい景色に。
しかし、上質な桃の果実を収穫するためのこの作業は桃の花自体の充実度や花の付いている場所などをしっかり確認しながら何処に桃の実を着けて栽培していくかを考えながらの大事な作業なのです。
▼りんごの花
リンゴの花はあくまでも可憐
りんごの花の不思議なところは、りんごの花はピンクから白へと色が変化ししていくというところ。蕾のときはピンク色で満開、満開まで薄いピンク色、満開を過ぎてくるほどに純白になります。
一般的にこのことを知らないものだから、花の色がピンクの品種と白い品種があるのかと思ってしまいます。品種によって花の形、花びらの大きさ、ピンクの濃淡には違いがありますがどの花も満開を過ぎると真っ白い花に変色するのです。
変色というよりは後半になるとピンク色が抜けてしまうという表現があっています。また、咲き始めのピンク色の濃さにも品種で違いがあって、「つがる」「シナノゴールド」「こうとく」などは濃いピンク。「サンふじ」「早生ふじ」などの花はピンク色は薄い感じを受けます。
やはり開花の早いのは早生の「つがる」そして「昂林」などの早生ふじの各種、そして「ふじ」、黄色いりんごの「シナノゴールド」と続き、「こうとく」は2-3日遅れて咲いてきます。
花の大きさや形、咲き方は微妙に違いが観られますが、満開のりんごの花は甘い香りを漂わせ、みごとな白い可愛い花を見せてくれます。
蜂と花の絶妙な関係
サクランボ、ラフランス、桃の花の「受粉交配」を担っているのが蜂です。昆虫類も、4月下旬になると活動が盛んになります。地蜂と呼ばれる「マメコバチ」は、この時期から一斉に発生を始め、活発に受粉活動を始めます。まるで果物の花々と事前に相談していたかのように、同時期に活性化するのです。
一方、恩恵を受ける花々も昆虫が授粉に来るのをただ待っているわけではありません。このタイミングを見計らい、甘く果物の香りを放ちながら、昆虫を刺激し誘い出すのです。主に主役は蜜蜂とマメコバチ。
授粉するために蜜蜂が活動できる最低の限界温度は15℃と言われています。20℃前後の穏やかなお花見日和は、果樹園の花々にとっても絶好。その年の豊作を占う大事な条件になっています。この時期の自然を注意深く眺めてみると、山も雪も、花も樹も、昆虫も微生物も、自然全体が一体化し一つの方向に向かい活動する大きい流れを感じることができます。
山形県の春は、大地から湧きだす壮大なパワーに溢れ、まるでそれぞれが自然のドラマを演出しているように映ります。
くだもの果樹園 お花見 まとめ
山形県内の果物産地の4月の気温の移り変わりは、私たちに急激な「自然の変化」を見せてくれます。4月上旬から中旬は霜が強く降りますが、サクランボを始めとする果物の花にとって、4月下旬の開花はギリギリ霜の害を回避できるタイミングでもあるのです。
百花繚乱のくだものお花見の愛らしい、また妖艶な花々は春を彩り、盛り上げてくれます。一方では自然の力の正の力と負の力が悲喜こもごもの景色も演出します。
サクランボなどの果物の花は、開花直前から開花にかけ、非常に霜に弱い植物です。強い霜が降りると雌しべが枯れ、実を着けなくなってしまいます。このような「霜の害」に逢わないぎりぎりの時期に、花々は開花受粉し、実を着け、最短で子孫を残そうと必死なのです。
山形県の果物地帯の回廊は、天童市の国道48号周辺から東根市の県道296号「フルーツライン」あたりをドライブすると、そこかしこで可憐な花を咲かせた素敵な風景に出会うことができます。
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