◆◆ ばっちゃん物語 第23話 ≪ばっちゃん子供頃のお話し≫ ◆◆
■泣かされたのは権太、あの滑り台が壊される!
「おめえ、まさかオラのあんちゃんのごどば、忘れたんじゃねえのがー」
「おめえ、オラのあんちゃんから命ば、助けらたんでねえのがー」
黙ったままの大きな権太をトコちゃんが下からのぞき込んで語ります。
権太は、こぶしを固く握ったまま、しばらく押し黙って動きません。
しばらくして、その拳がふるえています。
そして今度は権太の肩が震えています。
そして沈黙を切り裂く大きな声が・・・。
「うお―っつ」
「うお―っつ」
「うお―っつ」と権太は
うめき声とも泣き声ともつかない大きな声を出して走り出しました。
その後ろから佐助と子分たちが追いかけます。
権太の牛のような大きな目から大粒の涙がボロボロ
泣いています。
もう感情を抑えることなど出来ないのです。
「うおーっつ!」「うおーっつ!」
雪の中を走りだしました。
自分でも判らなくなってしまった行き先。
ただ泣きながら走り続けました。
そして行きついたところは村はずれのあの雪の山。
そこにあったスコップを持つと権太は自分の造った大事な滑り台
を呻きご声ともつかない奇声を発しながら壊し始めました。
佐助たちがやっと追い付いてしばらくその光景を
眺めていましたが、佐助はうなずくと自分もスコップ
を持って子分たちに目配せして
みんな滑り台の解体作業に加わりました。
「うわあー!うお―!」それぞれに奇声を
発しながら作業しています。
小一時間もたったでしょうか
あの最大かつ最強の雪の滑り台はすっかり跡形もなくなって
ただの雪山に戻りました。
平らになった滑り台を囲んで、みんな肩で息を弾ませています。
ようやく権太は自分を取り戻しました。
みんな一人一人をねぎらってひとこと何か言って
自分の家の方に歩きだし、後ろから皆が付いていきます。
権太は、自分の家の横にあるかまくらにみんなを
招き入れたのです。
続く・・・。