飲みやすい人参ジュース 製造
私たち味の農園のある山形県の隣県となる新潟県といっても山形県酒田市は秋田県境に近い北端、津南町は長野県境の南端といえます。目的地のジュース工場は新潟県の豪雪日本一といわれる津南町にある津南高原農産という会社です。
目的地までの距離は450kmほどあります。羽越線経由の電車では不便なため車で行くと6時間かかることになり隔たりを感じさせられます。
秋や春に収穫された月山高原にんじんを加工してくれるジュース工場は新潟県津南町にあります。雪国の山形県で生産された人参はもっとすごい 日本有数の豪雪地帯に運ばれにんじんジュースになります。津南町は冬には3-4m深い雪に覆われます。雪国から行っても雪の多さに驚く豪雪の町です。
町を流れる信濃川によって形成された大きな河岸段丘の地形が特徴です。 信濃川からの恵みである肥沃な大地は、古くから人々の生活を支えていたようで、 この地域からは土器などが発掘されており、人々の生活の歴史が古いことの証も発見されているところです。
最高の原料で最高のにんじんジュースをつくりたい一心で2度、3度と足を運び鶴巻社長、桑原工場長から大事なお話しを伺いながらようやくにんじんジュースは製造されることになったのです。
トマトジュースに始る加工事業
鶴巻社長のお話しでは、そもそも日本のジュースの始まりといえば、戦後米国からの輸入品の模倣品、合成着色料と合成甘味料、合成保存料しかも無果汁というあまりにもひどいモノが多かった。名前はジュースだけれど、これを良くジュースといったものだと今さらながら、物資が無かったとはいえ、その酷さは笑うしかありません。
世の中が落ち着いてきた頃、1964年の東京オリンピック頃にもなると、高度成長と日本に富裕層などに婦人団体が活動を始めます。消費者運動の機運がもりあがってきます。中でもご婦人の消費者層の中で先進的な新潟県の消費者団体と鶴巻社長は交流が生まれました。
国内大手製造メーカーが作るトマトジュースの製造方法があまりにも粗悪かつ安全性が低いことを訴え、当時まだ野菜生産の生産者の組合を組織していた鶴巻さんに、「団体で購入するから本物の安全なトマトジュースをつくってくれ」と依頼されました。容器はビール瓶でいいからと始まったのだと当時のいきさつを話してくれました。
その後も、津南の地で、野菜やくだものの加工品を作っているのが、鶴巻さんが現在も社長を務める津南高原農産です。もともと雪深い津南の地で、津南高原の開拓農民として米や野菜の生産をしていた生産者の組合が消費者運動のはじまりから東京の消費者と直接販売に乗り出しました。
このように、津南高原農産のはじまりは今から20年ほど前、トマトジュースの加工が始まりでした。 その第一歩は、トマトの下処理からビン詰めまで、全部人の手で行っていたそうで、はじめ相手側の要望とは言え、容器はビール瓶に手作りのトマトジュースを詰めて届けるというとてもとても素朴な製造方法で全く独学なばかりか、相談するところもなく苦労したようです。
果肉たっぷりの人参ジュース
苦労の中から生まれた製法に時間はかかりましたが、着実に地力となって筋肉質の製造会社に育っていくことになります。特に確かな製造設備には思い切って投資していくということにもこだわって高精度な製造設備を導入しています。
津南高原農産のジュースは濃縮還元でない原料からのストレートジュース中心です。 原料をすりつぶし、ペースト状にしたものを搾汁しただけで、防腐剤などの化学合成された添加物は一切加えない自然のものです。
つまり化学合成された防腐剤などを使用しない無添加なので搾った果汁は高温高圧でレトルト殺菌されています。 この処理ができる設備は大手の工場以外では、あまりないそうですが、 こちらの工場ではそれを早くから取り入れていました。
殺菌処理された果肉ペーストはビンに詰める前に、非常に細かいミクロンのメッシュフィルターを通しています。 このフィルターを通ることによって、やわらかくて細かい果肉の食感だけがジュースとして残ります。
この製造工程の中でコアなところには高額の投資をしてきました。中小零細と云われる地方の食品加工会社では考えられないようなピカピカ高性能の設備が揃っています。
今は、評判を聞き付けて全国から新鮮な原料が送られてきてそれを委託製造という形で製造してジュースにして納品する形が定着してきました。
設備投資で2つの製造ラインに
このように、工場の設備機器はとても近代的な高性能の設備整っていますが 決して味と品質の均一された大量生産をするのではなく、あくまでも人の目の行き届く範囲で、厳選した鮮度の高い素材を活かした少量生産を続けています。
特に小さいロットでも原料にんじんの鮮度を大切にということで、にんじんジュースの製造ラインは2つのラインが設備されています。
大量に一気に製造するラインと小ロットに対応できるラインの2つです。基本は原料の多い少ないによって使い分けてクライアントの要望に出来るだけ添えるようにとの配慮がうかがわれます。
手作業で原料を水洗いしながら駄目なものはないかなどを常にチェックし、痛んだ部分を見つければ、そこを取り除きます。 そして、手作業で丁寧に皮を剥いて機械で加工できるように処理しています。
しかし、製造工程では全て自動化にして機械任せに製造することを戒めて、 津南高原農産を立ち上げたときの初心を貫いているのです。全て手作りで作ったジュースの延長として、真心を込めた、人の手による丁寧な作り方にこだわっています。
反面、高性能の製造設備も要所、要所に配置し作業全体に無駄が出ないような考え方が見られ、長い経験から培われたジュース製造の知恵が感じられます。
重要な人参の手剥き作業
人参ジュースは減農薬又は農薬を使わず、大切に育てられた人参をすりつぶし搾汁しただけのジュースが基本です。防腐剤を使わない無添加で安全なものだけを提供しています。
実は無添加ジュースを作る工程の中で 特に重要なのが「にんじんの皮むき」です。少しでも皮が残ると合成保存料なしの製法では 賞味期限が充分確保できくなってしまいます。
ところが人参ジュースに使われている原料は スーパーに並んでいるような形が綺麗に 整った人参ばかりではありません。
今では形が悪いというだけで市場に出まわらなかった人参もしっかり原料として活用しています。こだわるのは原料の人参の鮮度です。特に夏場は気温が高ので非常に大事なことになります。
中身は何も変わらないのに捨ててしまうのはもったいないという理由からです。とはいえ形が整っていない人参は、 機械で皮むきをすることができません。
ですから、人参の皮むきは基本的に手むきします。水洗いしながら状態を確認し、 ひとつひとつ丁寧に手で皮を剥いていきます。 これには熟練の技術が求められますが、鮮度を保つための低温の室内で、確実に人参の皮をむいていく単純作業が、美味しい人参ジュース製造には欠かせないのです。
作業は時間も手間もかかりますが、 だからこそ自然の恵みが生きた安全な 人参ジュースができることになります。
長年のデータ管理で高品質に
選別された材料は粉砕・殺菌などを経て フィルター搾汁し果肉を残した状態で充填。ここが設備の中で最重要の工程でここには高性能、高効率のお金がたっぷりかかる工程でありここは自動化されているところです。
最後にひと瓶ずつ、人の目と手で確認し、安全を確認されたものだけが皆様のお手元に届けられます。
こうした徹底した安全管理と、衛生管理と作り手の温かな眼差しのもとで人参臭さの極少ない美味しい「人参ジュース」は生まれています。
▼月山高原にんじんの収穫作業 人参ジュースになる 山形県鶴岡市