こうとく葉摘み9月中旬から
「こうとく」は11月上旬に収穫される蜜たっぷりのりんごです。その「こうとく」の葉摘みは9月中旬頃からはじめます。葉摘みするのは太陽のエネルギーをたっぷり取りこんで蜜いっぱいの美味しいりんごにするためです。
りんごは葉摘みすることによって太陽光がりんごの葉っぱ全体に当たるようにして、りんごに養分が集められ実の着色もすすんできます。
りんごの樹全体を見たときにうっそうとして、葉っぱ同士が重なり合って光が入らない状態を無くして太陽光の効率をより高く利用するための作業なのです。
この葉摘みをすることで、光の入り方が効率的になり葉っぱの光合成が旺盛になり葉の同化力が高まって、葉で作られた養分がりんごの実の方に集まっていく仕組みです。
言いかえると、りんごの実の栄養分を作るための工場であるりんごの葉が太陽光という原料を効率よくとりこんでりんごの実に美味しい栄養分を蓄えていく工程ということです。
こうとく玉廻ししない常識だが
通常ふじりんご(サンふじ)は収穫前に玉回しをしてりんごの表皮の色ムラを無くし、りんごの着色をすすめます。表側1回、裏側1回最低2回の玉回しで着色を促します。無袋栽培のサンふじにはとても大切な作業です。
しかし、蜜女王「こうとく」は軸が短く太く柔らかいため普通は玉回しはしません。無理に玉回ししようすると軸が外れて「こうとく」の実がとれてしまうからです。せっかく育ててきたりんごの実がとれてしまったら元も子もありません。
しかし阿部りんご園では蜜入りをたっぷりにするためにしっかり葉摘みをして、玉回しもベテランの作業員が慎重にやっているのです。
しかし、それには阿部さん流のこうとくの玉回しに対応した高い技術があるのです。通常、サンふじの玉回しが180度位、回すとしたら、「こうとく」はその半分の90度位、回すのがいっぱいですが、あえて危険を覚悟に玉回しして着色をすすめているのです。
蜜センサーで全量蜜入り出荷に
こうとくの玉回し、それはより美味しい、より大きい蜜入りの「こうとく」の栽培に挑戦しているからです。
なぜ、実落ちするリスクを承知でこうとくの玉回しに手間暇をかけ、リスクに賭けているかと言えば、蜜入りと着色を良くした「大玉の最高級のこうとく」をねらって生産しているからといえます。
それには、これまでに栽培技術を高めてきた十数年のこうとく栽培の蓄積があるからなのです。
それは、一般のこうとくと比べて特に大きいこうとくをねらっているからで、阿部りんご園特有の「すごい蜜入りの特大こうとく」を作るための秘策でもあるのです。
そしてまた、最後の仕上げの樹上熟成の期間をしっかり取って、たっぷりの蜜入りさせて、蜜センサーですべて検品、100%蜜入りのこうとくを標榜したいと始めました。
こうとく 蜜入り栽培の裏舞台
こうとくの樹についている部分(軸)は太く柔らかくしかも、短いふじりんごのように玉廻しするにはリスクが高い。すぐに実が落ちてしまうからだ。
そこを長年の経験と技で玉廻しをあえてすることで、蜜入りも満遍なく良くなることは知られてはいるがなかなか実践する人は見あたらない。
こうとくに賭けてきた阿部さんは毎年、この作業を真剣に取り組む。蜜入りには必須の作業ということらしい。またこの仕事だけは作業員の皆さんにさせることは出来ないという。それほどデリケートなタッチなのだろう。
蜜入りセンサーを効率よく利用するにはもともとのリンゴの蜜入り具合がよくないのでは、作業は進まないことは確かだ。
まず、たっぷり蜜入りするリンゴ、こうとくだけを栽培することから始めないと蜜センサーも役立たずの代物になるから、行き届いた栽培、誰よりも鋭い感性がないとこの業務フローは成り立たなくなるから。