無袋栽培ふじの発祥地 山形
「ふじりんご」は通常、果実に袋をかぶせて育てる有袋栽培が主流でしたが、「サンふじ」は果実に袋をかけないで生産した 無袋栽培した太陽光たっぷりのふじりんご(サンふじ)を指します。りんごに袋をかけずに栽培される無袋栽培の山形のふじは、太陽の光をふんだんに 受けて育ちます。
この栽培方法には「葉摘み」という太陽光の利用を最大化して、美味しさも最大化しようという作業です。無袋栽培のふじりんごをサンふじと呼びます。そしてまた無袋栽培では「葉摘み」を重視します。
袋を実に被せた見かけの良い有袋栽培と違い、りんご表面の見た目は良くありませんが見せかけより何より食味を最重視したお客様の美味しさを優先させた栽培方法といえます。
それは口下手で自己主張のない穏やかな東北人の気質によく似た栽培方法とも言えるかもしれません。実は、この無袋栽培ふじりんご(サンふじ)は「美味しさ」で山形県朝日町から全国に栽培方法が広がっていきました。
葉摘みで太陽光を美味しさに
太陽の光をたっぷり浴びさせて育てる無袋栽培のサンふじの作り方の基本は日光なので、良く陽が当たるように栽培していきます。
収穫が近づく10月上旬になってくると、りんごのサイズが決まってきます。そして少しずつ色着きも始まってくる頃です。
この収穫が近づくタイミングで太陽光をしっかり浴びさせるための作業が葉摘みです。りんごの実の周りの葉っぱを中心に摘みとって日あたりを確保していきます。
もちろん、葉っぱを全部取っては光合成出来なくなりますから、ふじりんごの実の周りを中心に丁度良い日当たりを作っていくのです。
葉摘み作業は経験からくる微妙なバランス感覚が求められます。口伝出来ない経験からの葉摘み具合があるようです。サンふじの美味しさを左右するほど重要な作業になります。
りんごの品質が決まる葉摘み
葉摘み作業をしっかり施した美味しいふじりんご(サンふじ)はお尻までしっかり色が回り真っ赤なりんごになります。
10月になると、りんご畑で連日、葉摘み作業が行われています。葉っぱが多いほど美味しいリンゴになるのですが、十分に味が出来上がった今、リンゴたちの次なる使命は、色づき赤くなることになります。
光合成の基本は葉が多いほど光合成するので美味しくなると理屈では成り立つわけですが、葉っぱは取らない方が良いことになってしまいます。
実際はりんごの実も光合成によって美味しくなるのです。実に光をたっぷり当てることでもりんごは美味しくなっていきます。
そこで、葉っぱを摘んで、お日さまがよく当たるようにしてあげます。太陽光いっぱい浴びた真っ赤な色の健康りんごが無袋栽培のふじりんご「サンふじ」なのです。
また、りんごの実の周りばかりでなく葉がうっそうとしている状態では全体の葉っぱが太陽のエネギ―を最大化できません。
りんごの樹全体からみた葉っぱの状態、日陰、日当たりの状態をよく見て葉摘みをしています。
蜜入りリンゴにするために
赤く熟れたきれいな美味しりんごにするための葉摘み作業についてお話しをしています。
まず葉摘みはりんごは実に日光を直接受けることによって赤く色づく性質、すなわち直光着色性を持っています。
全体に風通しがよく、無駄な働かない葉を減らすこと、りんごの実に陰をおとす葉っぱを摘み取ることによって、りんごの実に十分な光を届けて色づきを良くする作業を葉摘みといいます。
写真を見れば解るとおり2枚の葉っぱが実に接近している部分で、太陽が動いてもいつも陰になっている部分に赤い色が付いていないことがわかります。
このような葉っぱを取り除くことによって実にまんべんなく日光を当てることができるようになります。葉摘みとは、こうしてきれいにりんごを色付けることができるのです。
下から太陽光を反射シートで
太陽光の効率的な利用方法が葉摘みということになりますが、葉摘みばかりではまだ効果が不足しています。
もうひとつの太陽光は反射シートです。りんごの樹の下に敷いて、上からの太陽光からでは届かない逆側から光を反射させて光合成をすすめる優れものが活躍してくれます。
銀色や白色の専用の反射シートを果樹園に敷き詰めて使います。果樹園が太陽の反射で明るくなります。
ではりんごの色と味の関係はどうなっているのでしょうか。赤く色づいたりんごはどれもおいしそうですが、実際は全体が赤い=おいしいとは一概にいえないのです。
葉摘みや玉回しは主に赤く色付けるための作業なのです。リンゴの食味は葉っぱで光合成によってつくられた養分が実に届いて、実が熟すことによって美味しさが乗ってきます。
サンふじ葉摘みと樹上熟成
山形の無袋栽培のふじりんご(サンふじ)が雪やヒョウ害のリスクを承知で樹上熟成の期間を取って栽培するのは本当の美味しい完熟、蜜入りのふじりんご(サンふじ)を作りたいからです。
収穫時期を遅らせ降雪直前まで冷たいお天気の中で樹上熟成されたふじりんごは果肉の中には、完熟の証であるアメ色の蜜がたっぷり、さわやかな酸味と甘味のバランスが絶妙です。
しかし、このためには大きなリスクと隣り合わせです。降雪による軸周辺のひび割れ、この時期一番怖いのは雹害による傷、など収穫を遅らせるほど蜜も入りますがリスクも高まっていくことになります。
雪害、ひょう害の直前ギリギリまでお天気とリンゴと相談しながら生産者は美味しいりんご作りに賭けていることになります。
サンふじの葉摘み まとめ
山形県朝日町は無袋栽培の蜜入りふじリンゴ「サンふじの発祥の地」なのです。実を病気や害虫、傷から守る有袋栽培に比べ、陽に当っているりんごのほうが糖度も高くまた蜜もいっぱい入って、見た目は良くないが格段に美味しいからという発想の転換でした。実の周りの余計な葉をしっかり摘んで日当たりを良くして太陽のエネギ―をたっぷり利用します。
太陽のエネルギーと葉っぱの数をバランスよく調整する葉摘み作業は大切な仕事です。
その後に行う仕上げの玉廻しもまた大切な仕上げ作業です。ちなみに玉回しというのは樹になっているサンふじを1個、1個、反転させて日陰になる部分をムラなく日に当たるようにりんごの実を繰り返し反転させていく作業のことをいい、この刺激がりんごの着色を良くしてくれます。
葉摘みと玉廻しは無体栽培の研究から生まれた技術でした。あくまでも食味重視の栽培方法。美味しいサンふじを作ることを目的としているのです。 手間ひまかけた作業の積み重ねがサンふじを赤く美味しく、蜜入りに仕上げていくのです。
このような地道な一つ一つの作業が実ってサンふじは美味しくなっていきます。最後の仕上げは霜の降りる強烈な冷え込み。この冷え込みがサンふじ本来の素質と地道な生産者の努力を引き出して蜜入りサンふじを導き出します。