大粒品種 紅秀峰は期待の新星
紅秀峰(べにしゅうほう)は晩生種で、佐藤錦の後に収穫が始まります。佐藤錦より2週間ほど遅い、露地物は山形県辺りでは6月下旬~7月中旬に収穫されています。
『佐藤錦』よりも約2週間ほど遅れて収穫される晩生種の品種です。 簡単に紹介しますと、紅秀峰は昭和54年に山形県で、『佐藤錦』と『天香錦』という品種を交配して開発された比較的新しい品種で、最も人気の『佐藤錦』に比べて大粒で、果肉が硬く歯応えがあり、酸味が少なく糖度が高い事が特徴です。
とにかく粒が大きく歯応えがあるので食べ応えがあり、食べてみて、率直な印象としては「大粒さくらんぼ」といったところでしょうか。収穫期は7月に入ってからなので、お中元の贈答品として利用価値が高い期待のサクランボです。
山形県でもキャンペーンやイベントを通じブランディングを支援していることから紅秀峰の知名度も徐々に高まり上がってきており人気上昇中のさくらんぼの中では新しい品種です。
▼紅秀峰 大粒で豊作にするには
紅秀峰の長所 佐藤錦との比較
現状の山形県では「佐藤錦」の栽培の構成割合が全体の8割前後になっています。この佐藤錦志向の強さは現実に中々強固なものがあって、紅秀峰などほかの品種が佐藤錦の存在を脅かすまでに育っていないのが現実です。
この事が意味するのはシーズン前半から後半まで、佐藤錦で7月上旬までの間をカバーしていることです。佐藤錦の後半は、栽培方法や生産地でも違いがありますが、実が軟らかくなりやすく、アルコール化しやすく発送した場合に、過熟という大きなリスクを生じます。
さくらんぼシーズンの後半を実の固い紅秀峰がカバーしてくれると、全体を30日として前半と中盤の20日間を佐藤錦、後半10日間を紅秀峰という無理のないコンビネーションが確立出来ることになります。
▼山形さくらんぼの品種構成
紅秀峰の長所とは
1、紅秀峰は実が固く保存性高い
佐藤錦に比較すると、実の固さが魅力です。初夏のルビー色の果樹園の宝石に君臨する「佐藤錦」にも 大きな悩みがあります。完熟の佐藤錦の 味は絶品であるが。美味しいものほど命は短く劣化しやすいのです。最大の欠点は実が軟らかいこと。日持ちが短く過熟になりやすいなど、指摘される欠点があるのです。
佐藤錦はシーズン後半になると、特に実が軟らかく過熟(熟れすぎ)になりやすいう決定的な弱さが付きまといます。それに比べると紅秀峰は気温が高くなる7月中旬になっても実が固く、高温にも強く、日持ちが良いという送って安心なサクランボといえます。
2、紅秀峰は大粒の栽培が可能に
佐藤錦が一般的に(M)から(L-2L)がやっとなのに対して紅秀峰は2Lから3Lまで期待できる大粒の品種といえます。しかしその条件として、「芽欠き」と「摘果」を徹底しないと大粒は出来ません。大粒にするにはそれだけの労力と手間がかかります。大きな欠点は実の着き過ぎることです。
3、紅秀峰は糖度も高く食味が良い
大粒で実の固さが魅力な紅秀峰は食味も佐藤錦に劣りません。糖度も20度前後とかなり濃厚な食味です。
4、紅秀峰7月の晩生種だからお中元に
紅秀峰の収穫が始まるのは6月下旬頃からです。佐藤錦の収穫が終わると直ぐに紅秀峰を収穫します。7月中旬の15日頃まで収穫できますからお中元にピッタリのさくらんぼです。
紅秀峰の弱点 佐藤錦との比較
1、着果し易いので摘果が大変
紅秀峰はとても豊産性で着果が多くなりやすいサクランボ。摘果しないと葡萄のような小さい実が鈴生りに成ってしまう性質があります。生産者は満開期の天候不順による着果不足も心配ですが成り過ぎもまた困りものなのです。
2、遅霜に弱い霜に弱いといわれる
4月上旬から中旬にかけてサクランボの蕾がいちばん弱い時期、遅霜の害を受けやすい時期です。紅秀峰はサクランボの中でも霜に弱い方の品種で、他の品種に比較すると被害にあいやすいようです。霜に対しての抵抗性が低いという声も多いが、逆に佐藤錦より霜に強いという生産者もいるので、霜の程度、生産する場所によっても違いがあるようです。
3、育成10年程で突然枯れることも
紅秀峰を栽培を経験した生産者の人たちによると、紅秀峰は生育して10年頃に全部ではないのですが、突然枯死してしまう場合があるというのです。それが紅秀峰の欠点だと嘆いている人も中にはいます。10年育ててきて、さてこれから収穫が沢山期待できるという時に突然枯死されてはたまりませんね。
佐藤錦の品種構成から見た課題
さくらんぼと言えば佐藤錦は20世紀最高の品種と絶賛され、生食用としては他を寄せ付けない圧倒的な支持と人気を得てサクランボの王様の地位はゆるぎないように見えますが欠点が無い分けではありません。
ルビー色の果樹園の宝石に君臨する「佐藤錦」にも 大きな悩みがあります。完熟の佐藤錦の 味は絶品であるが。美味しいものほど命は短く劣化しやすいのです。佐藤錦の栽培面積があまりにも多くなってしまった弊害が出始めています。
佐藤錦の問題は人気、実力ともにダントツの存在になったことで山形県のさくらん生産量の70%以上が佐藤錦になってしまったことです。他の品種では紅秀峰が12%と佐藤錦を除くとトップです。しかし佐藤錦とは栽培割合には大きな違いがあります。
▼さくらんぼ生産者の減少と1戸当たり栽培面積
佐藤錦が収穫不可能の発生も
佐藤錦の偏重がもたらす弊害として、6月中旬から7月中旬頃まで佐藤錦が出回ることにより、産地や栽培方法で違いはあるにせよ、佐藤錦の収穫適期を超えた収穫が長びき、無理な栽培体系となってしまっています。佐藤錦が収穫期間内に収穫しきれない事態が問題化して起きてきました。
本来の佐藤錦の無理のない収穫時期は6月中旬から下旬ではないかと思います。7月までも引っぱる無理な佐藤錦の生産過剰が人手不足にもなってきたことから収穫遅れ、晩成種さくらんぼのもぎ遅れに繋がっているのではという指摘も見られるようになってきました。
▼山形さくらんぼの収穫時期
佐藤錦が多すぎる問題とは
佐藤錦という品種が優秀過ぎて、山形サクランボ全体の品種構成比の75%前後にもなってしまったことに問題があるといっても過言ではありません。この状態によってシーズン後半まで無理して佐藤錦を引っぱることになってしまったことに大きな問題と考えられます。
つまり、佐藤錦が多過ぎることに問題があるといえます。この状態をカバーできる存在は現状、紅秀峰しか品種はないと思います。たとえは紅秀峰は現状全体の15%なのですが、これが30%まで拡大できると状況は一変するのではないかと思います。
▼山形さくらんぼの年次収穫量と栽培面積
紅秀峰と 佐藤錦の比較 まとめ
さくらんぼシーズンの後半を実の固い紅秀峰がカバーしてくれると、全体を30日として前半と中盤の20日間を佐藤錦、後半10日間を紅秀峰という無理のないコンビネーションが確立出来るのではないかという大きい期待があります。
このように、紅秀峰を加えることによって考えられる理想の構成比は、全体の60%が佐藤錦、紅秀峰30%そして、早生品種が10%という構成になったとすれば全体としては生産に無理がなく、シーズンを長く有効に利用できるのではないかと思います。
利用者にとっても、6月上旬に早生品種、たとえば「静御前」6月中旬から6月下旬に「佐藤錦」、7月は実の固い日持ちの良い品種「紅秀峰」、若しくは「紅てまり」、「紅夢鷹」など新しい品種でしかも大粒のサクランボを利用できるようになる。まさに理想的な品種のバランスといえると思います。
▼紅秀峰の収穫前の仕上げは葉摘み作業