防風林によりオアシスに
庄内砂丘は長さ35km、面積約55km2を誇り、長さ日本一の砂丘として知られています。面積は、日本第二の面積を誇り、鳥取砂丘、吹上浜砂丘とともに日本三大砂丘のひとつとされています。
日本海の風が創り出した庄内砂丘は先人が苦労に苦労を重ね黒松を江戸時代から植林して数百年。今では、地下水の豊かな水捌けのいい豊かなオアシスの畑に変わりました。
この庄内砂丘の夏になれば昼は足が裸足では火傷するほどの高温に。夜は海からの風が砂丘を一気に冷やします。この砂丘の生み出す昼夜の温度格差は作物に濃厚な食味をもたらします。メロン、西瓜には最適といわれます。
江戸時代から防砂林で守る
冬の季節風は想像を絶するほどの強さが長年大事な庄内平野の障害とされて悩みの種であったことから、平野のお米や野菜の畑を守るために先人達が知恵を絞り砂の害、風害から平野を守ってきた歴史があります。
江戸時代後期の豪農であり偉大な商人資本家。本間光丘 本間家3代当主 1732~1801 宝暦8年(1758年)から藩から許可を得て、私財600両を献納して、酒田湊の西浜に砂防植林を行った。「積小為大」:小を積んで大を為す。という哲学が見て取れます。
「本間様には及びもせぬが、せめてなりたや殿様に」といわれた日本一の大地主で、「徳は得なり」の哲学のもと砂防林造成を行ったのです。
「天下第一の豪農」として、庄内藩十四万石の領内において二十四万石の大地主であり、「金銀財貨は積んで山の如く、伊呂波四十八蔵の倉庫には、累々たる米俵、金銀・銅貨・紙幣・古銭等その数算する能はず」とまでうわさされた羽後酒田の本間家中興の祖といわれる。
ネットメロン代表としての評価
庄内砂丘は夏には南国に負けない強い日差しが照りつけ、砂が焼けて裸足では火傷してしまうほどになります。東北の湘南ともいわれる山形県の庄内砂丘は日本海に面しています。
その松林に囲まれた庄内砂丘では、メロン栽培の歴史は古く大正7年からメロンが植えられた。江戸時代からの植林が定着し、防風林が整備されはじめ砂漠は豊かなオアシスに変わっていく中でメロン栽培は進取の挑戦だったようです。
本格的なメロン栽培は昭和初期からで、カリフォルニアの露地栽培を手本とし栽培方式が取り入れられました。しかし当時は技術が追いつかず、時代が戦時下に入ってしまい、中断を余儀なくされてしまいました。
戦後は、地元で育種した新しい品種「ライフ」を栽培。その後昭和37年にプリンスメロンが発表されると、さっそく庄内砂丘でも導入することになりました。 このプリンスメロンの味が全国で評判となり、昭和42年頃に砂丘メロンの産地としてプリンスメロンで全国的なメロン産地として地位を固める事になりました。
アンデスメロンなどの栽培で
この後、昭和50年代になるとアールスメロンを親に育成された露地ネットメロンの新品種がどんどん登場。53年頃から作付けされたアンデスメロンは、京浜市場で高い評価を得て以来、ずっと生産量が増加、アンデスメロンが主流を占めることに なったのです。
また平成10年にデビューした、JA鶴岡の「鶴姫」と赤肉の「鶴姫レッド」も人気が定着しました。アンデスの甘くとろりとした肉質に対し、肉質がしっかりとして爽やかな甘さが特徴で売り出し評価を得ています。
この庄内砂丘で生産される砂丘メロンは日持ちがいいことから関西方面にも多く出荷されていましたが、関西では赤肉の人気が高いことから、青肉の「アンデスメロン」や「鶴姫」に比べ、「鶴姫レッド」の方が多く作られている。さらに赤肉では「夏のクインシー」も評価が高く増産をはじめています。
温室のアールスメロンも
露地メロンの生産量で、山形県は全国第3位。メロン全体でも4位となっています。時期的には、砂丘メロンは夏のメロンに集中していますから、真夏のメロン市場を山形県が支えていることになるのです。
近年は、これらの露地ネットメロンのハウスによる促成栽培や抑制栽培に加え、さらにアールス系品種のハウス栽培も盛んになっています。
特に山形県育成オリジナル品種「山形メルティ」は品質の良さが注目されている品種です。
こうして山形県では、ネットメロンとアールス系メロンの両方の品目を、ハウスも利用しながらの安定 生産体制で送り出していることになります。
良質で豊富な水源から
庄内砂丘沿いの道を酒田市から鶴岡市のメロン産地に向かうと、途中いくつもの大きな酒蔵を見かけます。蔵元が居並ぶ酒田市の酒蔵3社と大山地区には4社の酒蔵があります。
聞くところによればこの庄内砂丘一帯には豊富で良質な地下水があり、これが銘酒の水源になるという。そして隣接する畑では、同じ地下水でメロンが育てられているというから、なんとも贅沢な話になっています。
砂丘メロンとは まとめ
焼けるような砂丘でのメロン栽培には多くの難しさもありますが、砂丘ならではの地の利(温度格差がおおきいこと)も濃厚な味のメロンをつくるには大きなアドバンテージなのです。
しかも砂丘独特の「水はけの良い砂丘地はデリケートなメロン栽培には好都合です。水分が多いと、メロンが吸収して糖度が下がってしまうのです。
そして「日中の強い日差しと、夜の涼しさ、そして最高の地下水。いくつもの条件が合致してはじめて瑞々しい甘さの砂丘メロンが出来る」とメロン栽培40年の達人生産者の小林満さん(61歳)は語ってくれました。
ところでメロンの表面のネット(網目)は、実が急に生長するためにできる、実割れのヒビが癒合したものをいうのです。「丸くきれいに太っていけば、ネットも細かく全体に均一に入る。これがいいメロンの見分け方です」とメロン作りのベテランは語ってくれます。
▼メロンの美味しい切り方