ぶどうの品種とその歴史
ぶどうの品種はとても多く、世界には10000種以上のぶどうが存在するといわれます。このうち日本ではマイナーな品種を入れると100種類以上があり、主な品種で50~60種類ほどが栽培されています。
古代エジプトの壁画などに栽培の様子が描かれていることからも分かるように、人類は、乾燥した土地でも育ち、ワインの原料にもなるぶどうを数千年前から育ててきました。古代エジプトのナクトの墓の壁画には、ぶどうの収穫や破砕の様子が描かれています。
日本での由来については諸説あります。奈良時代の高僧行基(ぎょうき)が訪れた甲斐の国(山梨県)で修行中、夢枕に手にぶどうを持った薬師如来が現れます。その姿と同じ薬師如来像を刻んで安置したのが、柏尾山大善寺です。
以来、行基は薬として大陸から伝わったぶどうを勝沼に伝え、栽培が広まったという説。山梨県・勝沼の雨宮勘解由(かげゆ)が自生の山ぶどうと異なるつる植物を発見して自宅に持ち帰り植えたのがはじまりという説などです。
日本一古い品種 甲州ぶどう
ぶどうはぶどう科の木になる果実で、世界中に様々な品種が自生していました。日本に昔から自生している山ブドウもその一つです。ヨーロッパやエジプトでは古くから栽培され、ワインも作られていました。古代エジプトの頃には既に栽培が始まっていたらしく、壁画などにその様子が示されています。
日本では山ブドウは昔から自生していましたが、奈良時代にシルクロードを経て中国から伝わったとされています。その系統が山梨で自生していた物を鎌倉時代になって栽培されるようになったというのが現在の甲州ブドウです。
鎌倉時代には栽培が始まったといわれる山梨県原産の甲州は2013年、DNA解析によって欧州系のぶどうと中国の野生種の交雑で生まれたものと判明しました。粒はやや小さく、果肉は柔らかく、香りは控えめ。ほどよい甘酸っぱさが魅力です。
源産地別に分類すると
ぶどうの原産地は2か所あり、西アジアと北アメリカです。 西アジア原産のぶどうからは多くの品種が生まれ、ヨーロッパやアジアの各地で広く栽培されています。 日本に昔からあった甲州などの品種も、西アジア原産のぶどうから生まれた品種です。 北アメリカ原産の品種は、コンコードなどがありますが日本ではあまり栽培されていません。
一言に『ぶどう』といっても誰もが知っているデラウエアや巨峰をはじめ、白ブドウ系や赤ブドウ系という分類以外にも、アメリカ系やヨーロッパ系、アジア系など、原産地の違いによる大別など色々な分類があります。
その色や形、大きさや味わいはそれぞれ個性があり、収穫(旬)の時期も微妙に違います。ここではそんな『ぶどう』に関して、主に生食用として流通して食べられている品種を中心にみてみましょう。
果皮の色で分けて分類する
また、ぶどうは果皮の色によって分けられ赤系、黒系、緑系の3つに大別されます。赤は「ゴルビー」「オリンピア」「甲斐路」や「安芸クイーン」など、黒は「藤稔」「伊豆錦」「巨峰」や「ピオーネ」などが有名です。
また緑は「シャインマスカット」「翠峰」や「ロザリオ・ビアンコ」などがあります。特に「赤系」のブドウは栽培するのが非常に難しく、ムラのない赤色のブドウを作るのは高い技術が必要とされます。
また果皮の色は、未熟なうちはどれも緑色ですが、成長の過程で赤や黒の色素が作られていきます。そのために果皮の色が違ってくるのです。なお緑系のブドウは色素が作られないため、熟しても緑色のままです。
赤系のブドウ栽培は高度技術
特に「安芸クイーン」「ゴルビー」などの「赤系」のブドウは栽培するのが非常に難しいとされています、気象変動による温暖化の中で一日の温度格差が大きく色付きに影響を及ぼすとされます。
その赤系ぶどうは温暖化とともにムラのない赤色のブドウを作るのは高い技術が必要とされます。このような理由から生産者の中には赤系の「安芸クイーン」「ゴルビー」や黒系の「ピオーネ」「藤稔」などの栽培を避けて「シャインマスカット」のような緑系の栽培に移行する人も多くなっています。
これは温暖化による気象変動によって赤系、黒系の着色不良が大きな障害になっていることを示しています。また嗜好の変化もあり最近では大粒で大きな房の種なしブドウ「シャインマスカット」は皮ごと食べることが出来きるうえに種無しブドウとして若い人たちに人気が上昇しています。
ぶどうの生産と品種
ぶどうは青森から広島や島根までの本州を中心、北海道や福岡などでも栽培されています。主な産地は甲州ぶどうで知られる山梨県で、次いで長野県、山形県、そして岡山県となっています
品種的には、日本で最も栽培されている品種は巨峰です。2010年度には5465haで栽培されています。ついでデラウェアが2967ha、ピオーネが2430ha、キャンベルアーリーが655ha、ナイアガラが513ha、マスカットベリーAが406ha、スチューベンが377ha、甲州が316haと続きます。
昭和45年ごろにはデラウェアが栽培総面積の36%を占め、ついでキャンベルアーリーが26%、甲州10%であったのが、昭和40年代後半より巨峰の栽培技術が確立すると急速に栽培面積を拡大し始め、1994年には巨峰の栽培面積がデラウェアを抜きました。
平成に入ってからはピオーネも急速に栽培を拡大させています。デラウェアは昭和35年の無核化技術の開発によって栽培が拡大したものの、粒が小さいため近年では栽培が減少傾向にあるようです。キャンベルアーリーや甲州ぶどうは戦前からの主要品種でしたが大粒の生食用新品種の開発によって栽培面積は大きく減少しました。
今でも活躍する小粒の「デデラウェア」
ぶどうの品種と分類 まとめ
日本のぶどうの品種の由来は甲州ブドウに始まります。明治時代に入ると欧米から新品種が次々と導入されるようになりました。当初はワイン製造を目的としてヨーロッパぶどうの導入が主に行われたが、乾燥を好む多くのヨーロッパぶどうのほとんどは日本での栽培に失敗してしまいました。
一方アメリカブドウの多くは日本の気候に合い定着したものの、ワイン用としては臭いがきつく好まれなかったため、生食用果実の栽培に主眼が置かれるようになりました。とくに普及したのはデラウェアとキャンベル・アーリーで、戦前はこの2品種が主要品種となっていました。
現在の品種の状況をみると生食用の大玉の新品種が開発され、赤系、黒系、緑系ともに大玉の品種に人気が集中しています。そしてデラウェアなどの小粒、スチューベンなどの中粒系品種は減少傾向になっています。
最近の需要傾向を見るとヨーロッパブドウの持つ「かみ切りやすくて硬い肉質」やマスカット香に対して大きな消費需要があります。そこで、肉質がかみ切りやすくて硬く、マスカット香を持ち、大粒で種なし栽培できる上、裂果などの生理障害を発生せず、一定の耐病性があって栽培しやすい品種の育成を行いました。市今人気のシャインマスカットです。
また、温暖化の気象の中で赤系、黒系の着色不良が問題視されるなか、既存の品種以上に着色しやすいぶどうの品種改良が待望されています。
▼山形のブドウ栽培 シャインマスカットなどの品種