「こうとく」や「サンふじ」などのりんごの美味しさの基準とされる「蜜入り」という言葉。蜜ってそもそもなに?「蜜入りりんご」は本当に美味しいりんごの証しなのでしょうか。普段疑問に思っている「りんごの蜜」について、りんごのプロがご紹介します。
蜜は溢れ出た甘味成分
りんごの蜜、その成分の正体とは何か。りんごの中に「蜜」が出来ていく過程と合わせてりんごの蜜の正体をみていきましょう。
1.光合成により、りんごの葉の部分で同化産物が作られます。それが成長の途中で「ソルビトール(甘味成分)」に変化します。
2.りんごの葉で作られた「ソルビトール(甘味成分)」は、次第にりんごの果実に転流し、果実の中で果糖などの「糖」になります。
3.やがてリンゴが完熟期になると、りんごの細胞内が「糖」で飽和してきます。すると甘味成分がリンゴの細胞内に入る余地がなくなり、細胞と細胞の間に溢れ蓄積します。
4.完熟が頂点になり、そこを過ぎた栄養分が細胞の外に溢れ出した甘味成分こそが「りんごの蜜」の正体です。言い方を変えると完熟の頂点をすぎたリンゴといえるのです
このように「りんごの蜜」の部分には、自然の甘味成分ソルビトールが多く含まれています。りんごの蜜ソルビトールは、甘ったるい蜜の味ではなく爽やかな甘みを感じさせてくれます。そのため、蜜入りであるほどさわやかな甘さのリンゴということが言えるのです。
つまり「蜜入りりんご」がおいしいワケは、りんごが完熟していることに加え、蜜の爽やかな甘みが増しているリンゴだからなのです。
蜜入りりんごはお早めに
前途でご紹介しましたが、リンゴが「蜜入り」するのは「完熟した状態」です。そのため、あまり日持ちしないのも特徴のひとつです。蜜入りリンゴを美味しく楽しむ際はぜひ新鮮なうちに食べましょう。
また「蜜入りリンゴ」はそのまま貯蔵しておくと次第に蜜が少なくなってきます。やがて蜜がりんごの果実の中に吸収されてしまい、蜜自体が無くなってしまいますので、ご注意ください。
ちなみに「りんごの蜜」はすべての品種に発生するわけではありません。りんごの蜜は「サンふじ」などのふじ系やこうとくなどのデリシャス系に多い傾向があります。
蜜入りは赤いりんごの晩生種に多いという傾向はありますが、黄色いリンゴにも発生します。「はるか」の蜜入りもおどろきに値するものがあります。
※デリシャス系とは:ふじやこうとく、スターキングデリシャスなど日本入って来ている美味しいりんごの元になっている品種です。アメリカ合衆国で生まれた優良品種でアメリカではとても一般的な品種です。
りんごの蜜の正体とは まとめ
リンゴの蜜はソルビトールという葉の光合成によって作られる物質です。この物質は、成長段階において葉から軸を通ってリンゴの果実内に運ばれます。そして、ソルビトールは果実の中でりんごの本来の甘味である「果糖」や「しょ糖」に変換されるのです。
しかし、りんごが完熟すると、ソルビトールは糖分に変換するのをやめてしまい、そのままの状態で蓄積されます。これがりんごの「蜜」の正体です。
リンゴの蜜は、その見た目からハチミツのような色をしているので甘いように見えますが、砂糖の甘さを100とすると、ソルビトールは60くらいなので、実はそれほど甘くはありません。
リンゴが蜜入りするのは完熟した状態です。そのため、あまり日持ちしないのも特徴のひとつです。蜜入りリンゴを美味しく楽しむ際はぜひ新鮮なうちに食べましょう。