蜜りんごの美味しさ成分
サンふじ、こうとくなどのりんごを切ったとき蜜があるとこれは美味しいリンゴと断定してしまいます。それは蜜りんご食べて美味しい経験を今までしてきたからにほかなりません。しかし、それは何が美味しくしているのか具体的には根拠はありませんでした。
何故そんなに美味しいのか。何が美味しさの本体なのか。考えていませんでした。この機会にその本質に迫ってみたいと思います。
蜜入りリンゴを切った瞬間に甘い濃厚な香りが漂い、そんなときは蜜そのものがパイナップルのような透明感と香りや味までがパイナップルと形容したくなることがあります。
だからといって味に大きな変化があるのではなく甘さも爽やかで、甘ったるいのではなく爽やかな甘さと強い香りが残ります。
蜜の糖度は高くない
蜜リンゴを半分に切る。切った時の見た目がほかのりんごと大きく違います。パイナップルのような透明度のある蜜の成分はソルビトールです。ソルビトールそのものはそんなに糖度は決して高くありません。爽やかな甘い味です。じつは白い果肉部分と比べても糖度に変化はないといわれています。
また、違いとして蜜入りのりんごには香りが高いという特徴が共通点としてあります。爽やかな甘みと香味の強さが蜜りんごにはあるのです。きっと、美味しい香りがある事に気が付くはずです。今度気を付けて食べくらべてみてください。
余談ですが、樹上の蜜リンゴは陽の光の角度を一定の条件に合わせると果実の中にある蜜を確認することができます。蜜りんごは捥いで切って診なくても蜜入りは樹上から確認できるのです。
りんご蜜が消えるのは何故
少し話がそれてしまいますが、蜜入りで購入したサンふじですがあるときリンゴを食べようと半分に切ると、「蜜がない!」ということもたしかにあります。同じ箱のサンふじにはちゃんと蜜は入っていたのに、「ハズレなのかな?」と思っりします。
実は、蜜がなくなるのはりんごが生きている限り自然なことなのです。収穫した時が蜜のピークで時間が経つと蜜はだんだん消えて無くなるのが蜜入りりんごの宿命です。
りんごは生きています。生きている限り呼吸をしています。呼吸をするにはエネルギーが使われますからそのエネルギー源が蜜そのものといえます。
りんごの蜜は寒い冬をこすために蓄えた栄養分、ともいえます。ですから冬の前に「蜜入り」として保存しておいたリンゴは蜜を呼吸のための養分として越冬期間に全て消化しつくしてしまうのです。
りんご蜜は自体を守るため
蜜入りと期待して切るとそこにはみつがないわけですからそれはもうガッカリ感この上ないかもしれませんがりんごが生きている以上しかたがありません。やはり冷蔵庫の野菜室で湿度を保つことと低温が蜜の持ちを長くします。
ただ、りんご自体の呼吸を低下させる工夫で蜜の保存性は高まります。低温で冷蔵保管することになると蜜の消える早さを抑える事は出来ます。りんごの美味しさを出来るだけ長く活かすために冷蔵庫の活用は欠かせません。リンゴの呼吸を抑えると鮮度を保ちやすくなるのです。
もう一つの方法はりんごのエチレンを無くすことです。エチレンは野菜や果物の熟成を促します。このエチレンをカットすれば劣化は抑えることができるのです。鮮度保持の一つの方法として研究されているようです。
りんご蜜の正体とは何?
りんごの蜜、その成分の正体とは何か。りんごの中に「蜜」が出来ていく過程と合わせてりんごの蜜の正体をみていきましょう。
1.光合成により、りんごの葉の部分で同化産物が作られます。それが成長の途中で「ソルビトール(甘味成分)」に変化します。
2.りんごの葉で作られた「ソルビトール(甘味成分)」は、次第にりんごの果実に転流し、果実の中で果糖などの「糖」になります。
3.やがてリンゴが完熟期になると、りんごの細胞内が「糖」で飽和してきます。すると甘味成分がリンゴの細胞内に入る余地がなくなり、細胞と細胞の間に溢れ蓄積します。
4.完熟が頂点になり、そこを過ぎた栄養分が細胞の外に溢れ出した甘味成分こそが「りんごの蜜」の正体です。言い方を変えると完熟の頂点をすぎたリンゴといえるのです
このように「りんごの蜜」の部分には、自然の甘味成分ソルビトールが多く含まれています。りんごの蜜ソルビトールは、甘ったるい蜜の味ではなく爽やかな甘みを感じさせてくれます。そのため、蜜入りであるほどさわやかな甘さのリンゴということが言えるのです。
りんごの蜜は香りが特徴
蜜入りりんごの嗜好性は香り成分であるエチルエステル類の集積により高くなるという研究が注目されています。
蜜入りりんご「ふじ」や「こうとく」に香気成分として多く含まれるエチルエステル類が、 りんごの風味をよくするために重要な成分であることが解明されました。
このエチルエステル類はフルーティ、フローラル、スイートなパイナップルに似た香りを持ちます。まさに、蜜りんご、こうとくを食べたとき確かにパイナップルの香りを感じたことがあるから、このお話には頷けます。
エチルエステル類のちから
エチルエステル類はフルーティ、フローラル、スイートなパイナップルに似た香りを持ちます。実験では、同じ糖度のりんごでもこの香りを感じられる時に、より好ましいという評価がでました。つまり、食べる時に広がる蜜の香りが、糖度を超えたおいしさの謎の答えです。
これまで果物の「おいしさ」は、糖度により評価されてきました。しかし、蜜りんご、こうとくの入った箱を開けた瞬間、魅惑されるあの「香り」もまた、おいしさを感じる上で、とても大きな役割を担っているわけです。
蜜リンゴの強い香りは嗜好性を高めるという研究が示すのは、香りと味は密接な関係にあるということ。美味しさを感じとる大事な要素としてこれからますます研究が進んでいくことでしょう。
蜜リンゴの美味しさは香り
蜜入りのリンゴは「甘くておいしい」と人気がありますが、糖の量や甘味度は蜜無しリンゴと差はなく、おいしく感じる理由は香りにあることを明らかにしました。
蜜入りのリンゴには、香り成分であるエチルエステル類が多く含まれており、これらがリンゴの風味を強め、おいしさを高めます。
ノーズグリップ(鼻栓)による次のような試験結果があります。
▼リンゴ「ふじ」について、香りを感じないようにノーズクリップを装着して食べると味の強さに蜜の有無による差はない。
▼一方、ノーズクリップなしで香りを含めて評価するとみつ入り果はフルーティ、フローラル、スィートな風味が強く、嗜好性が高いリンゴの主要な糖類から推定する甘味度は、みつの有無で大きな差はない。つまり「ふじ」の蜜の有無による官能特性の違いには香りの効果が強いという研究結果があります。
極端な言い方かもしれませんが、この結果からみると香りは美味しさの一部として存在しているのであり、口の中の味覚だけで美味しさは決まっているのではないことを表しています。
▼蜜入りリンゴこうとくの蜜入り状態を観る