さくらんぼの種から芽は出るが
さくらんぼの種から芽は出ることもありますが、さくらんぼは発芽率が悪いので、種を植えても芽が出る確率はかなり低く芽が出たとしても病気の抵抗性が低いため成木までの栽培は難しいようです。特に実を着けるようになるまで木が育つかというと否定的な言葉しか出てきません。
何故かというと、さくらんぼの木は病気に強く育ちの早いサクラの品種の木に接木して育てます。その根のある土台になる木のことを台木(だいぎ)といいますが、桜の仲間で病気に強く育ちのいい素質を持った種類を選んで台木にしています。その台木に美味しい実をたくさんつける桜桃を選んで接ぎ木している訳です。
そうすることで、成長が旺盛な病気に強いサクランボの樹が生まれるというわけです。土台は頑丈な台木、実は美味しいデリケートな美味しさを持った佐藤錦のようなさくらんぼの実がたわわに実ることになります。
さくらんぼの樹は接木して栽培
上記で説明したように、さくらんぼの樹は通常は接ぎ木される品種との相性のいい耐病性の高い台木に接木して栽培しています。それは台木が丈夫な野生のサクラの木には病気に強い性質や生育が早い性質とかを持っているからです。つまり、佐藤錦の樹のままでは病気に弱かったり生育が遅かったりするからなのです。
ですから、サクランボの種から芽が出て育っても立派な実の成る木に育つことは難しいことになります。山形のさくらんぼ園で育っている全てのさくらんぼの樹に共通したやり方なのです。
さくらんぼの品種、佐藤錦の種から育った桜桃の樹は大事に育てれば、何年かは生きることは生きることができるでしょう。しかし、生育が遅く、立派な幹に育つことはないでしょう。ほとんどが3年以内に病気などが原因で枯れてしまうことになります。
さくらんぼの種を発芽させる
さくらんぼの種の芽を確実に出させるには低温の環境下におかなければなりません。さくらんぼはたくさん眠る性質がありますから、約50日から60日間の低温の中で眠ってもらいます。そのあと常温に出してやると春だと勘違いして芽が出る性質があるのです。これを休眠期間といいます。
休眠は気温が7.2度以下で進み、この積算時間を低温積算時間と言います。 この時間がぶどうでは400時間、桃では1000時間をすぎればすっきり目覚めて自発的に休眠を完了しますよということです。 しかし、さくらんぼは自発休眠完了が1200~1400時間と長く、やたらと眠ります。
冷蔵庫の野菜室に乾かないようにラップして約2か月保存します。その種を冷蔵庫から出してプランタに植えます。しっかり眠ったサクランボの種は発芽しやすくなります。プランタに植えて芽が出たなら乾燥しないように適度に水やりをすれば芽が出て葉っぱが出るのを見ることで成功とみなします。
そのあとは、やはり専門のサクランボ栽培の技術がいりますから実を着けるまでは無理かと思います。さくらんぼの葉っぱを鑑賞できればエクセレントですね。
さくらんぼ種飛ばし大会
サクランボの種のお話しといえば「佐藤錦」で知られる「東根さくらんぼ」を使用して、さくらんぼの種をできるだけ遠くに吹き飛ばすことを競うイベント。一般の部、レディースの部、子どもの部があり、参加賞は「東根さくらんぼ」。各部門の規定距離を超えたり、上位3位内に入ればさらに賞品が贈られます。
これまでの飛距離の公認最高記録は20m05cm。種飛ばし競技は当日先着1000名までで、無料で誰でも参加することができる。会場では、特産品販売やスタンプラリーゲームのほか 「さくらんぼ種飛ばし熱血指導塾」なども開かれ、大いに賑わう。近年はコロナ禍で大会はお休みになっています。
サクランボの種を大事に一度紙コップに植えてみてはどうでしょうか。きっと芽が出て緑の葉っぱを見ることが出来ることでしょう。しかし、その後は、病気などが出やすく台木に接ぎ木が必要であると実感できると思います。楽しく学んでください。
さくらんぼ苗木 ウィルスフリー
土台となる植物(台木)に、違う種類の植物(穂木)をつなげるという技術を接ぎ木といいます 。 樹勢が弱い品種を、樹勢が強い品種に接ぎ、木の勢いをコントロールする ことにつながります。
特にさくらんぼの台木は、ウイルスフリーの苗木として育てています。ウイルスフリーとは、現在までに知られているウイルスには感染していない苗のこと。 植物の芽の最先端部(成長点や茎頂)は、ウイルスが存在していないため、この部分を取り出し、培養・再分化(植物体形成)させて作った苗はウイルスフリー苗になります。
ウイルスフリー苗は、生育が良く、形状が揃うなど良質の作物ができ、収量が多いのです。この特徴を生かして成長力の旺盛で病気に強い苗を生長点培養などの技術を駆使して無菌室で培養抽出して選抜して苗に利用しています。
接ぎ木の目的とは
接ぎ木をする目的は主に以下の5つにあります。
1,病害虫に弱い品種を、病害虫に強い品種に接ぎ防除するため。
2,樹勢が弱い品種を、樹勢が強い品種に接ぎ、木の勢いをコントロールするため。
3,一つの個体に複数の品種の花や果実をならせるため。
4,特定の個体を増殖させるため。
5,授粉に適した品種を接ぐことで結実率を上げる
接ぎ木の原理は植物の体内には、養水分を移動させる役割で、外皮の内側にある薄い黄緑色の人間でいう血管のような「形成層」があります。接ぎ木をする場合、台木と穂木の切断面を合わせるのですが、この形成層をピッタリ合わせれば成功します。
形成層がつながることにより、断面の周囲に“カルス”という植物の組織が形成され、枝と枝を完全に固定して合体します。よって、接ぎ木がうまくいかない原因は「雨や風で接ぎ木の形成層がずれた」もしくは「カルスが形成され固定する前に穂木が乾燥してしまった」の2つが主な理由です。
サクランボ台木の種類
さくらんぼの実は台木の種類によっても実の着き方品質、大きさまで影響しています。生産者は畑の土質なと条件に合致した台木を選んでサクランボ苗木を導入します。
▼青葉台木・・・・・通常サクランボ苗は特に表示がない限り青葉さくら台木です。青葉さくらを挿し木で増やし、穂木や芽を接ぎ増やします。花は綺麗ではありません。
▼コルト台木・・・・・台木としての登録品種で、根の張りが良く肥沃な圃場で育てると、生育旺盛になり、樹勢抑制技術が無いと結実が不安定になります。
サクランボ農家によっては、根の張りが良いので青葉台より糖度が高く、風に強く倒覆を免れた場合もあります。
▼YD台木(矮化台木)・・・・・YD台木苗の地植えと、コルト台、青葉台木苗を鉢植えした場合、鉢植えの方が矮化効果は遙かに高い。施肥管理や仕立て方で矮化はきまります。盆栽は日本の伝統的な矮化技術です。
▼YD台木は早く実る?・・・YD台木や、鉢植えで樹勢を抑えると生理落果しない訳ではありません。
▼自家受粉する品種だから1本でも実るか言うとそう簡単ではありません。どんなに幼果が付いても生理落果を止めないと実りません。
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▼サクランボの生育と作業、剪定から収穫まで