日本のシードルの現状は
リンゴでつくる発泡酒シードルが国産でも飲まれるようになりました。シードル好きにとっては国産でいろんな種類のシードルが出来て選べる幸せを感じることができます。
青森や長野、山形といったりんごの産地で地元のりんごを使ったシードルを作るワイナリーやシードル醸造所が増え、盛り上がってきています。日本産のシードルは、ふじや紅玉といった糖度の高い食用りんごを使うことが多いのが特徴。つくり方はそれぞれに個性がありますが日本のリンゴらしい繊細ですっきりした味わいのものもあります。
本場のシードルは当然ながら、ヨーロッパの産地固有の伝統製法、醸造方法によるところもあるとは思いますが、大きな違いは原料になるリンゴの品種や品質のよる違いはもちろん、栽培方法や規模や農業の環境なども違うことから当然違ったシードルになってきます。
日本のシードルと本場の違い
一般に日本の原料となるリンゴは主に生食用のふじや早生ふじなどの品種が主流になります。今のところシードルを醸造するために開発された専用品種は見当たりません。
これに対して本場ブルターニュなどのリンゴはシードル専用の品種があり、収穫方法や収穫時期の違いなど、完熟、未熟の原料を使い分けてシードルの発酵を調整しています。また、完全な無農薬、厳格な決まりの有機栽培など生産からシードルの個性を生み出しているといえます。
本場ブルターニュのシードルは当然ながら、ヨーロッパの産地固有の伝統製法、醸造方法によるところも厳格であるというところは遠く及びません。大きな違いは原料になるリンゴの品種や品質のよる違いはもちろん、当然ながら気候風土の違いや栽培方法や規模や農業の環境なども違うことから当然違ったものになってきます。
ワインの産地にみられるように、畑の土壌の格付けなど環境は大きな食文化の違いとなって、歴史の厚みとその環境である文化の大きな違いを生み出していることは間違いありません。
シードルの原料品種の違い
シードル発祥の地といわれるフランス、ブルターニュ地方では通常、シードルはサイダーアップルといわれる専用の品種を使用し、日本で行われているような摘果などの作業にあまり細かい手間をかけないで生産効率を優先に栽培しています。生食用のように粒を大きく色付き良く直接食べた時の美味しさを追求する必要がありません。
もちろん、この場合は果実を食べるのではなく、美味しいシードルを求めているわけですから当然といえば、当然です。
日本のリンゴのほうが世界的にはめずらしいほど見た目がいいのがリンゴです。日本のスーパーで販売されているようなリンゴとは違ったイメージ。色あいも疎らで色づきもよくありません。ですからサイズもいびつです。日本でいわれる規格外の果実を使ってシードルがつくられています。
しかし、伝統製法から収穫時期は糖度の高くなる完熟をねらって、一期に収穫作業が行われるのが一般的。日本的な目から視れば大雑把、ヨーロッパ的農業からすれば、効率的。伝統的、やはりその美味しさも、長年の経験からくる納得の栽培方法であり、だんだん日本でも、少しずつ理解されファンも増えてきています。
なんといってもシードルは「ビールのようにガブ飲みするもの」健康的な果実リンゴの飲み物。ユーロピアンは豪快にガブ飲みというわけです。それほど身近な飲み物、気取らないカジュアルなもののようです。
蜜リンゴ100%のシードル
やはりヨーロッパのシードルと日本のシードルの大きな違いは原料となるリンゴの違いにあるわけですが、もちろん伝統製法に裏打ちされた醸造方法にも違いはありわけですが、飲んだ時のその味の違いは原料の違いよるものが大きいといえます。
私たちは蜜入りリンゴといわれる「こうとく」という特殊な品種を使ってシードルを開発したいと考え試作を始めました。ただ単に生で食べて美味しいリンゴでシードルをつくれば美味しいシードルになるに違いないとシンプルに考えたのです。
ですから、生で食べても十分に美味しく食べられるもぎたての蜜りんご「こうとく」を使って作っています。本場、ブルターニュや他のイギリスややスペインといった伝統製法のシードルとも違ったシードル。今始まったばかりの日本のシードルとも違ったシードルを目指しています。
蜜リンゴこうとく
大切にしているのは第一に原料のこうとくというリンゴです。完熟した蜜入りリンゴこうとくを収穫するとすぐに新鮮な状態で搾汁します。完熟のリンゴと搾汁するときの鮮度を重要視しています。
それは、美味しいリンゴでシードルをつくることが一番美味しいシードルへの重要ポイントと決めているからです。ここが蜜りんごシードルのキモと言えるところ。
蜜入りリンゴの透きとおった風味を活かした個性をお届けできるように日本酒の蔵元、オードヴィ庄内の杜氏さん、技術者、職人の皆さんと協力して作ります。
そして国産りんご。蜜入りリンゴで知られる「こうとく」を使った深い味わいの蜜りんごシードルをめざして最高の原料による最高のシードルをめざします。
生のこうとくでは味わうことができない、こうとく特有の香りの高さ、爽やかな果肉の深みが表現出来ればと考えています。よそにはない至高のシードルが出来るように生産者はじめ関係者は日々、最高の「蜜りんごシードル」と呼ばれる目標を目指して課題に正面から向き合って努力しています。
醸造方法による違い
シードルは甘いお酒だと思っている方も多いと思うのですが、甘口から辛口まで、すっきりしたドライなものまであります。アルコール度数は2~9%くらい。アルコール度数の違いは原料となるリンゴの糖度の違いから由来します。
糖度が高いリンゴほど度数は高まり、糖度が低いとアルコール度数は低くなります。どちらがいいのかとなりがちですが、それぞれに飲み口が違ってリンゴの果汁の美味しさをしっかり伝えるもの、あまりリンゴ果汁を感じさせないものまであります。それほど様々な特徴を打ち出してアピールしてくれるのがシードルとも言えます。
シードルの成分と飲み口
りんごを原料としているので、体に良いとされるポリフェノールやカリウム、リンゴ酸やクエン酸などが含まれ、健康や美容効果も期待できます。醸造の過程で甘さやすっきり感を程よく狙った飲みやすいものから、リンゴの果汁をあまり感じさせない辛口ドライなものまでさまざまな飲み口があります。
気取らない家庭料理にシードルはよく合います。アルコール度数も低めですからビールのようなガブ飲みもよし、細めのスパークリングワインのグラスにおしゃれに飲むのもよしです。どんな料理にも合う家庭の食卓酒といえます。
このバリエーションの広さは、ビールのような広がりがあり、ローカルの特徴が強く打ち出され広がりを見せてくれます。ヨーロッパでは各地に特徴的、個性のある醸造所が点在しています。それぞれに製法や原料栽培方法、品種の違からくる個性的な味のシードルが活躍しています。
まさに地域の土壌に由来し、農業、栽培方法まで土壌に依存しているわけですからヨーロッパならではの歴史の重厚さを感じます。