「紅てまり」の大粒はギフト用
佐藤錦と紅てまりを中心にサクランボ栽培をしている芦野さんのさくらんぼ園には特徴があって、さくらんぼの栽培面積は60アールと決して広い方ではないが、品質にこだわった高級品だけをねらった集約的な栽培方法をしています。よそにはない高品質で鏡詰め、手詰めなどのギフト用の高付加価値の商品に絞った果樹園経営が特徴となります。
もともとサクランボは高級品ですが、その中でも芦野さんのサクランボ園では、より粒が大きい上に、粒ぞろいの栽培技術が確立されていることは特筆に値します。
いずれにしても大粒のサクランボに拘っているところが特徴です。輝きのあるぷっくら大粒の佐藤錦が期間の前半集荷して、大きな特徴の晩生種の大粒「紅てまり」がさくらんぼシーズンの後半(7月中旬)に出荷されていきます。
紅てまり大粒は芽欠きから
大粒だけをねらって栽培するこの栽培方法は、長年の畑の土作りからはじまり有機肥料だけを使ってサクランボの樹の栄養状態をしっかり管理しています。そして、さくらんぼの花咲くはるか前、まだ積雪のある1月頃から粒を大きくするために芽欠き作業という蕾(つぼみ)を間引く作業をします。
通常8個ある花芽を3個残してのこりを間引きます。寒さの中、根気のいる作業で1本の樹に無数にある芽を全てこのようにするには気の遠くなるような作業となります。
芽欠き作業ばかりでなく、このような、いきとどいた栽培管理を一年間油断なく丹精込めないと本当の意味で一級品は出来ないと語ってくれました。そして、大事なのは「家族の協力体制、その力は大きいですね」と言っています。
紅てまりは山形生まれ
紅てまりは1980(昭和55)年に山形県立園芸試験場(寒河江市)において交配してできた種子から出来ました。10年間育成した後の1990(平成2)年に、その木の実生の中から選抜育成された品種です。
1997(平成9)年に登録出願、2000(平成12)年に品種登録されています。登録時、血統的には「ビック」×「佐藤錦」と推定されています。
紅てまり大粒の美味しさ
収穫できるのは7月中旬以降に収穫できる晩生種に属します。果実の大きさは10g以上で極めて大きく、糖度は20%以上になるいこともあります。果肉が固くパリパリとした食感があって歯ごたえがある。日持ちも良いところに7月のギフト用さくらんぼとしての強い印象を感じます。
果実の状態をみると、大きさは佐藤錦よりひと回り大きく1個10g位です。果実の皮の色は濃い紅色になります。切った直後の果肉の色はクリーム色。果肉の硬さは硬く劣化しにくいので日持ちが良い所が強みに受け取れます。
果汁は多い方で歯ごたえがあります。甘味はやや多く、酸味はほどほどあり濃厚でバランスよい食味が特徴になります。特徴の一つとして皮が固めでぱりぱりしたしっかりした食感は7月のギフト商品として日持ちの良さが長所。
このサクランボの成熟期は7月上旬から中旬、高温になる7月のサクランボとして果実の日持ちは良いのが晩生種の中では大きな特徴として受け止められます。
実際に食べてみた食味は
紅てまりは粒が10g以上と大きく、果皮、果肉ともに硬めでしっかりしていて日持ちが良いこと、そして果肉は糖度18から20度にもなり、とても甘いのに酸味も感じられるので、濃厚なのにさっぱりとした佐藤錦とは違った食感があります。
今回入手した果実は、サイズ2L、短ハート形で、果皮はつやがあり、色は明るい赤色から濃紅色までばらつきがありましたが、食べてみると、確かに甘みが強く感じられ、適度な酸味もあり全体的に濃厚でとてもおいしいサクランボでした。
「鏡詰め」の美しさに驚く
このように大粒にするために徹底管理された芦野さんのサクランボの出荷形態で人気なのが「鏡詰め」という最高にきれいで輝きのある詰め方です。誰でも出来る詰め方ではなく熟練した女性だけが担当しています。
基本的に、高品質で大粒、新鮮、粒ぞろいでないと出来ない詰め方なので、値段は高めになりますがこの品を一度でも見た人は心を動かされます。
鏡詰めはサクランボの実にはお腹と背中がありますがいちばん色の濃い盛り上った背中を上にむけて、同じ色合い、同じ大きさの粒だけを選り分けて並べていきます。
粒は大きく、まっ赤に色付き、濃厚な甘さ一粒も欠けることなく最高品質な厳選された粒ぞろいのさくらんぼ旬の前半は「佐藤錦」旬の後半は「紅てまり」だけができるサクランボの匠の技、ベテランのプライドを感じさせます。
▼大粒「紅てまり」の3L桐箱 鏡詰め
大粒さくらんぼ「紅てまり」 まとめ
1月~3月に芽欠き作業をすることで、大粒で濃厚なさくらんぼ「紅てまり」が生まれます。この作業は4月下旬の満開直前まで続きます。収穫までには膨大で地道な様ざまな作業の日々が積み重ねられます。
大粒のサクランボをつくる作業は、雪の降る2月中旬から「芽欠き作業」。5月中旬にはさくらんぼの着果数を確認した上で着いた実を間引く「摘果作業」がはじまり6月上旬までおこないます。最後は太陽光を効率よく取り込むために収穫期までに「葉摘み」をして収穫作業の準備となります。
大粒さくらんぼの紅秀峰や紅てまりでも着果数を制限しないで自然のままでは大粒にはなりません。もちろん佐藤錦も同じでL玉を収穫したいのであれば、芽欠き、摘果、葉摘みは必要不可欠のプロセスという事です。
生産者は、毎年ちがうお天気と樹の状態を見ながら、地道な努力を惜しまず「さくらんぼ美味しいね」と言ってもらえるように栽培しています。