大粒にする佐藤錦の芽欠き
生産者の阿部さんに佐藤錦を大粒にするための「芽欠き」の仕方をお聞きしました。今日の作業では、真ん中の芽を残して周りの芽を2~3個残します。今回は3個残しました。
サクランボを大粒にするためにさくらんぼの芽を3個残して取り除きます。佐藤錦、紅秀峰、紅てまり。目的はもちろん大粒さくらんぼをつくるために雪のある2月~4月までサクランボの花が満開になる直前までおこないます。
しかし、霜の被害が怖いので、芽欠きは大粒の芽から順に欠いて小さい芽を3個残すようにします。つまり芽が大きいほど早く成長するので、霜に合いにくい遅い芽を残して安全を図るのです。サクランボ霜害とは4月の開花前の蕾の時に霜に会うと雌しべが枯死して着果しなくなる害をいいます。つまりこの時期をすぎないと最終的に着果数が確定できません。
大粒の佐藤錦をつくる作業はこれで出来上がりではありません。この後も5月中旬に佐藤錦の実の数が決まったら摘果というもう一度今度は着いた実を間引く「摘果作業」をおこないます。その後また粒を大きくするために太陽光をしっかりとりこめるように5月下旬から葉摘みと作業をしてようやく6月下旬の収穫に入るのです。
想像以上に寒い時から根気いる作業の積み重ね
雪中の地道な作業が大粒に
この作業をすべての樹、すべての枝にある芽に対してやっていきますが、時間と作業量は膨大なものなるのは覚悟しなければなりません。時に芽欠き後の4月に遅霜の害で制限した芽が被害に遭うと着果数が極端に不足するという大きな被害に発展することになります。
その「芽欠き」の作業性には期限があって花の咲く前のまだ芽が固いうちに処理しないと芽がうまく取れないし、早過ぎても芽が小さくてやりにくいのです。2月から4月の開花にかけての短期間に処理しなければならない仕事なのですが出来ないと芽が大きくなって作業がしずらくても花が満開になる直前まで続きます。
寒い時期の手先の細かい作業はしっかりした防寒の身支度と手先の自由になる暖かい薄手の手袋がないとできません。寒さとの戦いが1月の剪定時から始まっています。
通常8個あるサクランボの花芽(つぼみ)を3個残す
開花受粉がうまくいかない時
この「芽欠き」作業というのはサクランボの収穫までのいちばん最初の実の制限であり膨大な作業となるわけですから大きなリスクもかかっています。この作業が終ってから大事な受粉を経て実の数が決まるわけですから、霜害や満開時のお天気が不順で受粉がうまくいかなかった場合は2倍の大きなダメージもあるわけです。
つまり芽かきは大粒のサクランボが取れるかまったく確定できない段階で、実を制限してしまうわけですから、大きなリスクを賭けることでもあるといえます。大切な受粉の時期に低温だったり、ミツバチの働きが悪かったりすると一粒も実がならないこともあります。
こうなると、芽欠きに費やしたたくさんの時間が水の泡と化してしまうわけです。このようなことも何年に1回くらいの頻度で起きますが、全部ではないので残った佐藤錦に集中していきます。
逆に受粉が順調に経過して実がなり過ぎると今度は摘果という収穫前の作業が膨大な量になってしまうので生産者は、通常、全部の樹で「芽欠き」を完全にするわけではなく、出来る範囲内の部分的に「芽欠き」して、労働力とリスクを軽減している現状もあります。