熟練した手先の細やかな作業
サクランボの高価になる理由をサクランボの生産にかかわる作業面から解りやすく説明したいと思います。煌びやかなルビーのサクランボが収穫されるまでの物語です。
まだ雪がちらつく頃、さくらんぼの花咲くはるか前、まだ積雪のある2月頃から粒を大きくするために目欠き作業という蕾を間引く作業をしています。静かな果樹園の中で脚立の移動を繰り返し、手先の感覚だよりの作業なため手袋に指先がないものを使います。
雪が降れば時に指先の感覚がなくなることもしばしばです。音のない静寂な果樹園に時間がながれ、時間の1本の樹を終えるまで何時間も過ぎていくことになります。作業自体は単純な手先の仕事ですが足先の冷たさと、指の感覚を持続させるには忍耐がいります。
通常8個ある蕾を3個残してのこりを間引きます。雪の降りしきる寒さの中、根気のいる作業で1本の樹に無数にある芽を全てこのようにするにはひとつ一つ、気の遠くなるような細かな手作業となります。
そして残った一本の樹の約60%の花芽を取ってしまうことになります。というと簡単なお話ですが、1本の樹に何万という蕾(つぼみ)芽が着いているわけですから、1本の樹についている小さなサクランボの芽を何万と3つを残して全部取除くのはものすごい作業量になるのです。
お天気リスクを最小限に努力
まお天気によって収穫が左右されているサクランボ栽培はリスクが高い商品です。このリスクを乗り越えて収獲まで行き着くには大きな障害を毎年乗り越えていくことになります。
サクランボの 授粉はミツバチを放し飼いにする方法と、地蜂と呼ばれるマメコバチを養成するなどがあります。その両方を駆使するのが今は主流になっています。
サクランボの花が満開になり授粉時期にお天気が悪かったりすると、受粉が上手くいきません。そんな時は人の手でひとつ一つ授粉していくことになります。
それプラス人の手で毛バタキを使う方法などを組み合わせ、確実に受精させる事が万全の体制で準備します。
摘果はサクランボの大粒のため
サクランボの満開から授粉作業が終わり、さくらんぼの結実状態の確認ができる5月10日頃になると、摘果作業に移ります。生理落果と云って開花後に少し実が膨らんだ位で落果してしまう実が沢山あるからです。
その状態ではまだ残る実なのかが確認できないので、サクランボの花の満開から20日後にそれぞれの枝にどれくらい実が着いているかを確認してから摘果ははじまります。
サクランボは摘果により、着果制限をすると、高品質で、甘い大玉のさくらんぼが実ります。 着果した粒が多すぎると、小さい実がたくさん着いてしまうので、着色も良くありません。そのままにしておくと全体が生育不良になって規格品にならなくなる恐れがあります。
着色を良くするため、たくさん着果している樹、時々みかけるのはぶどうの房のように細かい粒がビッシリ着いている場合は徹底して摘果作業を行い、風通しと日光がなかまではいるようにしてあげないといけません。
この摘果は出来るだけ実の小さいうちに行なうことが求められるので日に日に成長してくるサクランボの生育を気にしながら慌ただしい中で作業を急ぎます。
葉摘みは 着色と品質に不可欠
サクランボの色づきに邪魔になる、日光を遮る葉っぱを摘んで、サクランボの着色をうながし品質を上げるための作業ですが、小さな葉だけ摘んで、大きな葉はこれから果実の肥大や糖度をあげるため、まだまだ働いてもらわなければならないので、できるだけ摘まないで残してもらうようにしています。
実の周りの余計な葉っぱは実の肥大や色着きに邪魔になってしまいますから、限られた空間を有効に利用して、太陽のエネルギーを最大化するために効率良い空間を創ります。
この作業もさくらんぼの実の色付きを良くするための大事な作業なばかりではなく収穫作業をスムーズに行うための大事な準備なのです。葉っぱ摘みをしっかり行うことで次の収穫作業の効率が上がります。
6月に入ると急ぐのは雨除けハウスのビニールをかけること。梅雨の雨からサクランボの実を守ります。
また、太陽からの採光を高めるために地面から反射させ、着色を良くするための反射シートを敷き詰めます。着色が違ってきます。
▼さくらんぼの設備、雨除けハウス
▼山形さくらんぼの市場出荷量と販売単価の推移
朝採れサクランボを当日発送
通常、佐藤錦は1本のさくらんぼの樹を2回に分けて収穫作業をします。全ては早朝4時頃から収穫して朝採れサクランボで発送しています。1回目は、着色の良いものだけを選り分けて、お腹と背中の色をみながら、着色の悪いものを残します。2回目は残され実の色が8割色付いた時まで待って、残りをもぎます。
何故サクランボは着色を待って収穫するかというと、サクランボはもぎ取ってしまうとそれ以上着色する事がないからです。トマトのようにもぎ取ってからしばらくすると赤く色づくという事がないからなのです。もぎ取ったときの色がいちばん色付いた状態という事になります。
この収穫作業の難しい所は、早朝から約2mの脚立の上に何にも掴まらないで、両手を使って収穫する事が1人前の作業の条件です。実は危険なのでこれが出来る人は収穫の職人といわれる人達に限られます。
さくらんぼにストレスなく
それも、色着きの良いものだけを選り分けてもぎ取るのは素人では、至難の業。それでも8グラムほどの小さな実を一つずつもぎ取っていくのは手間がかかるのです。1時間の収穫量は慣れた人でも7-8kg/時間がやっとでしょう。慣れない人は3㎏/時間が精いっぱいというところなのです。
早朝4時から遅くとも10時頃までにして収穫作業は終了します。そして朝採れサクランボを待っている人たちにその日のうちに選別、箱詰め、梱包して発送します。午前10時を過ぎるとサクランボの樹にストレスを与えるので、10時頃で収穫は終了させます。
サクランボは高温になった時間帯に収穫などの作業をすると実が軟化したり、日持ちが短くなるなどのストレスからくる問題が発生するといわれます。やはりサクランボはとても繊細でデリケートな果物と言えます。
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サクランボ高価な理由 まとめ
さくらんぼが高価な理由はサクランボの作業は人にしかできない細かな作業の量が圧倒的に多いことによるものです。雪の中の1月の剪定に始まり収獲して荷づくり発送まで他の果物には無い人間にしかできない作業の連続です。
そして、2月、3月は芽欠き作業、5月摘果作業、そして6月には葉摘み作業。また6月なるとすぐ雨除けハウスにビニールを架けます。実が生育するときに雨にあたると実割れしてしまうので、品質の良い完熟なサクランボを収穫するためには、面倒だが雨よけハウスの設備は欠かせないのです。
さらに、日当たりが悪いと色がつかないことから、収穫期が近づくと、日かげを作る余計な葉をつみとる「葉摘み作業」をしながら実の状態や葉っぱや雨除けの設備の安全性などに目を配るのです。
作業のクライマックスであるサクランボの収穫は慣れない人では効率が悪いので、職人と呼ばれる熟練した人たちの仕事です。上手になるには長い経験が必要です。
サクランボの生産現場の人手不足の問題の最大の悩みはこの職人の人たちの高齢化にあるといえます。