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さくらんぼ物語 佐藤錦から未来へ

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佐藤錦の作付が70%を超える


山形には、明治8年(1875年)に東京三田育種場から、洋なし・りんご・ぶどうなどの苗木にまじって、3本のさくらんぼの苗木が入ってきました。その後さくらんぼ栽培はリンゴ、洋なし、桃などの果物とともに山形県内で普及し、官民一体となっての努力も実り、現在、山形県のさくらんぼ生産量は全国生産量の75%を占めるまでの「さくらんぼ王国」となっています。


このさくらんぼ王国を築き上げた功労者としての筆頭はきっと佐藤錦の存在かもしれません。きっとそうでしょう。佐藤錦が現状を作り上げたことは誰も疑いません。


そして、佐藤錦は20世紀最高の品種という高い評価の時代が長く続きました。しかし、最高の評価ゆえに佐藤錦は圧倒的に人気が高くサクランボ品種全体の70%以上まで増えていくことになり、それが今度は仇になっていきます。


山形さくらんぼと言えば佐藤錦、絶賛され、生食用としては他を寄せ付けない圧倒的な支持と人気を得て山形サクランボの王様の地位はゆるぎないように見えますが、よく見ると本当は欠点が無い分けではありません。

 

▲山形さくらんぼ全国シェア

資料:山形県


 ▲山形県のさくらんぼ品種構成

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資料:山形県


 

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美味しい佐藤錦は軸、サクランボの柄が緑で太いこと


 

佐藤錦が収穫しきれない


佐藤錦の問題がささやかれ始めたのは近年ことです。初夏のルビー色の果樹園の宝石に君臨する「佐藤錦」にも 近年大きな悩みがあります。完熟の佐藤錦の糖度は高く 味は絶品であるが。美味しいものほど命は短く劣化しやすいのです。日持ちが短く過熟になりやすいなど、指摘される欠点指摘されるようになります。


サクランボの品種があまりに佐藤錦に集中したことで、短い収穫適期に収穫しきれないという問題が頻繁に起きるようになってきました。この問題はとても相対的で、収穫適期に佐藤錦が収穫しきれないという問題はかつては聞くことがありませんでした。


佐藤錦という品種単独の問題ではなく、季節労働力、地域労働力環境と深くかかわることです。以前は近所から沢山のアルバイトの人たちがサクランボの収穫作業にたくさん手伝いに来てくれ佐藤錦の収穫の現場は盛り上がりを見せていました。


その人達が急激に集められなくなる人手不足の問題が新たに生まれたのです。日本全体の労働力不足による求人難から派生している問題と思われます。また、この問題には人手不足ばかりでなくサクランボ生産者の高齢化も大きく関わっている問題です。生産者自体も後継者のいる農家は少ないのが実態で農家構造の問題ともいえます。


山形さくらんぼの歴史は150年、佐藤錦が生まれて100年、佐藤錦に勝るとも劣らない新品種も数多く生まれてきています。

 

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紅秀峰は佐藤錦より遅い晩生種、収穫期が緩和できる


 

佐藤錦を越える超大粒の品種


高齢化と人手不足の問題を解決するにはどんな方法があるのでしょうか。現実的なアイディアとしては佐藤錦の作付割合を70%まで引き下げる。そして紅秀峰などの晩生種を25%、早生の大粒品種を開発して5%程度に増やすというものです。


中性種の佐藤錦の前後に早生、晩生の新しい大粒で日持ちのよい品種を育てて、佐藤錦の割合を下げて、無理のない栽培体系を構築しないと人手不足と高齢化に対応できないときに来ているのです。


この青写真だとかなりの改善が期待できるものと考えられますが、早生種の大粒さくらんぼの開発は少し時間が掛かりそうな状況と見られます。ポスト佐藤錦はどんな品種か、候補は晩生種では実績のある紅秀峰、大将錦、紅秀峰、紅てまり、紅夢鷹などといえます。生産者はどんな品種を期待しているのでしょうか。


現状から見ると、紅秀峰が抜き出ています。7月に収穫する晩生種ですが、実が固く日持ちが良いという特徴は魅力です。そして、実が大きくなりやすく2L、3Lも期待できます。欠点は実が着きやすいという性質と逆に霜に弱いとも云われ生産者は選択に苦慮しているようです。

山形さくらんぼ さくらんぼ生産

資料:山形県


 

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さくらんぼの収穫期は人手不足が深刻、高齢化も影響


 

 

季節労働力が不足して


さくらんぼ農家の中には、親族や近所の人たちが中心になって収穫や出荷の作業をしてサクランボの生産者を支えてきました。サクランボ産地の近隣の地域からそのお手伝いしてきた方々が高齢化してきていることも年々、アルバイトなど人手不足の原因と考えられます。


さくらんぼ農家が最も人手を必要とする収穫期の6,7月の短期間に雇用を探すことが年々難しくなってきているのは明白。雇用環境の改善がすすむ中、正規雇用が増える環境の中で短期雇用のパートタイマーは集まりづらい状況が続きます。


この中で見えてくるのは、規模を拡大しようという若い後継者が育っている農家と、これ以上増やせない高齢化の現実もあり、新しい品種を増やせない理由も一方であります。新しい品種への移行という問題には避けて通れない高齢化、人手不足の問題が根底には課題として残っています。

 

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2015年開発が始まった大粒新品種「紅王」500円硬貨位大


 

世界に向けた新品種の開発


前述したように山形県では佐藤錦を中心にこれまで日本一のさくらんぼ産地を築きあげてきました。しかし、品種構成が「佐藤錦」に偏重していることから豊作年は収穫が遅れ、品質が低下するなどの課題も生じています


大粒品種といわれる紅秀峰は寒河江市にある山形県立園芸試験場(現山形県農業総合研究センター園芸試験場)において昭和54年に佐藤錦に天香錦を交配して得られた実生から選抜育成され、平成3年に品種登録された品種です。


紅秀峰を生みだしたこの試験場で新たな取組みが始まっています。山形県では他の産地の追随を許さないブランドの強化を図る必要があると感じています。このような課題を解決するため、商品性の高い「やまがた紅王」を開発しました。


山形県に適した500円硬貨以上の超大玉で外観がよく美味しいサクランボ。しかも保存性が高く海外に出荷もできる新品種に大きな期待を寄せています。

 

 

さくらんぼ生産 サクランボ全国生産

資料:山形県


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さくらんぼの未来への期待が大きい「やまがた紅王」


 

 

大粒さくらんぼ500円玉サイズ


山形県は市場で活躍できる未来志向のサクランボ超大玉で外観がよく、商品性の高い「山形C12号」を開発しました。期待の新品種やまがた紅王です


「山形C12号」は平成9年に「紅秀峰」を種子親に、C-47-70(「レーニア」×「紅さやか」)を花粉親として交雑したもので、平成29年12月19日に品種登録出願が農林水産省より公表されました。 


最大の特徴はこれまでの品種に比べて格段に果実が大きく、着色良好でツヤがあり外観が優れている点です。その果実は「紅秀峰」よりも大きく、3L(28~31㎜)が中心となります。


果実の品質に関しての情報として、糖度が20度以上と「佐藤錦」並みで、酸味が少なくすっきりとした甘さで、食味良好です。果肉が硬くしっかりとしているため、収穫期間が長く、保存性が高い性質とクレームの原因に多い、ウルミ果や果肉軟化の発生が少ないことも特徴です


このため、日持ち性、輸送性にも優れることから、高級贈答や輸出向けの販売が期待されその市場もねらっています。 

 


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試験場では少ない人手で収穫作業が出来る仕立方を研究


▲さくらんぼの世界の生産と生産国

さくらんぼ生産量 世界さくらんぼ生産

資料参考:農水省


「やまがた紅王」を開発 世界へ


この新品種は海外でも通用する見た目、赤い「濃い紅色」大きい「28mm~31㎜超と3L~4L」海外を意識した「日持ちの良さ」常識を超えた驚きのサクランボを意識して生まれたといえます。


日本の農産物の人気が高い中国や台湾では、赤い果実は縁起物とされ、超大粒サクランボを作ることが出来れば高級贈答用として大きな需要が期待できるとみている。すでにサクランボのターゲットは海外に向いているといえその意識は開発にも大きな影響を与えていると見えます。


「やまがた紅王」は山形県が2015年に「山形さくらんぼ世界一プロジェクト」の一環として開発に乗り出し山形県農業試験センター園芸試験場で生まれた「山園C12号」を超大玉新品種候補として選んだとしています。今後の活躍に期待が膨らみます。

 


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