のびのび育つ大粒のおコメ
生産者、大谷流のお米づくりはイネ自体の能力を信じて、のびのび自由奔放に育てるのが、このイネつくりの特徴です。稲の植え込み株数を広くとって太陽光を最大限に活用するイメージが最終的に粒の大きさやお米の美味しさに違いを生み出す大きな特徴です。
この栽培方法は田植えするとき株と株の間を広くして太陽の光が株元(土から稲の茎が出ている所)まで届くように株間(株と株の間)を驚くほど広くとるのが基本で田植えの時にほかの田んぼとの違いがはっきりします。この植え方をするために田植え機械を特別に改良しています。
田植えのころは株数が少ないためにこれで大丈夫かと思うほどの見掛けですが、穂が出るころには大きな穂をつけて周りの田んぼとの違いがはっきりしてくるのです。
今から40数年前の昔は田植え機械がなかったころの人の手で大事にひと株ひと株人の手で植ていた頃の栽培方法に似ています。一株一株の間隔を極端にひろくして根元まで太陽の光をたっぷり浴びさせるのが大谷流の栽培方法「太陽いっぱい栽培」です。
基本は根元まで届く太陽光
生産者の大谷さんのお米作りの根幹は苗の植え込み間隔を広くして太陽のエネルギーをたっぷり受けることです。言い方を変えると太陽エネルギーの最大化への挑戦といえます。
植込みの広さは一般的なのは70-80株/坪ですが大谷さんは36株/坪とイネの株と株の広さは通常栽培の2倍の広さです。
そしてそのことに関連して根が土の中で広がっていくときにその広さがあると土の中での根の占有面積に余裕があって太い根がのびのびと深く地中に入り込むような育ち方なってきます。
大谷さんのこのようなお米作りの狙いは、いかに太陽のエネルギーを最大化出来るかにかかっています。それによって大型の稲ができ、お米の粒を大きく育て、太陽いっぱいの美味しいお米にすることです。
昨年の秋の大谷さんの「太陽いっぱい栽培」の稲刈りは、ひとめぼれ、はえぬき、コシヒカリ、ミルキークインの順番に刈り取りしました。
取材のとき撮影しておどろいたのは1本1本の茎がすごく太く、その太さに応じて穂が長く1本の穂に驚くほどのたくさんの籾(もみ)、お米が着いています。
稲穂全体が一般の栽培の稲と比べるとズッシリ重量感を感じます。
疎い植え方で生れるメリット
稲の株と株の間隔を広くとる疎植栽培はもちろん、太陽光を遮る邪魔が少ないだけ日当りはよくなりますが、大きく成長するまでの間はリスクも多くなります。田植え直後、苗の時期は遮るものがないので風や嵐で傷みます。鴨などの鳥害も受けやすく、弱った苗を捕植する手間もばかになりません。
しかし、6月、7月と順調に育つと穂が出るころにはほかの稲とまるで大きさが違った稲の姿になることをイメージして管理します。一株一株が太く、粒張りのしっかりした一粒一粒が充実した美味しいお米が出来あがるのは経験上確認できるところです。
それ以外に生産コスト的にも、作業効率的にも多くの特典が生まれてくるとわかってきました。
▼育苗・田植作業の労力・コストを軽減できる。
1、株間の広さ(条間30cm×株間30cm)で移植する36粗植栽培は、60の慣行栽培と比べると田植えに使う10aあたりの苗箱数は約半分で済みます。田植え時の苗補給が大幅に改善され田植え作業の効率が2倍以上になります。
2、準備する苗箱の数が半分になることから播種から田植えまでの労力とコストを大幅に減らすことができます。
3、 手間のかかる育苗コストを節約したい人や、規模拡大でコストを下げるために作付面積を拡大したい人にはうってつけの栽培方法です。
4、 収穫が近くなると倒伏することが多い場合などは抜本的な改善となります。
■株間が広い栽培方法(粗植栽培)と一般の植え方
イネの力とお米の力を引出す
こんなに魅力いっぱいの栽培方法ですが、根本的には大きな違いはありません。そんなに難しいことでもありません。今までと同じように田植をしていて、肥料を蒔いて、水管理をして、収穫する。 特別なノウハウが必要なわけでもなく、従来と全く異なる稲作りでもありません。違いは稲が伸び伸び育ってくれることに大きな違いが生み出されます。
違いが感じられるのは外見では収穫の時の稲の姿とそこから生まれるお米の美味しさです。おコメの粒の大きさ収穫量も今まで以上に期待が出来ます。この栽培方法が提案する疎植栽培は、高齢化している農家の皆様の春仕事の労力を圧倒的に軽減できるところです。
田植えという稲作最大の重労働を軽減出来るのも魅力です。低コスト・省力化に貢献し、様々なメリットをもたらす栽培方法です。
お生産者大谷さんのお話し
「本来の稲作りの姿ではないでしょうか。自由奔放に育てるのが、このイネつくりの特徴なのです。太陽光線をたっぷりあてて、出たいだけ目いっぱい茎を出させることが出来ます。」
「その茎に着きたいだけモミをつけさせるので自ずと穂は大きく育つ。光線も風通しもよいから、節間が伸びない。下葉も枯れない。登熟期になっても倒伏の心配は全く考えなくてもいいのです。」
大谷さんは「茎数は苗の力と太陽光線でとるものだ」と考えている。苗に力があって、太陽光線があたっていれば、田植え直後からどんどん分けつ(茎が枝分かれすること)して茎が増えていきます。
このように自由奔放に育てられた稲は、従来では考えられないようなダイナミックなお米を収穫することにつながっています。
この栽培方法を別名、疎植栽培と呼びます。植付株数を従来よりも疎らにして、株の間を広くして光を受けやすくする栽培方法です。
この疎植栽培の特長は、株と株との間が広いことによって稲の受光態勢と風通しが良くなり、隣同士で葉茎がふれあわないため、稲が力強く育つことです。病気にも強くなります。
稲の本来持っている生命力が丈夫な太い茎を作り、大きな穂を育てるのです。これがやがて大きな美味しいお米になって私たちを元気に育んでくれることになるのです。
生産者がない理由とは
多くの生産者は横目で見ながら興味は示すが、この「太陽いっぱい栽培」を決してやろうとはしません。高齢化もあってか意欲的に稲作りに積極的に取り組む人は少ないのが現状です。
実は、これはチャンスと受け取ることが出来ることもあるのですが。
1、多くの生産者はこの栽培方法を使うと収穫量が下がってしまうと考えている。美味しいお米が出来ても減収しては元も子もないと思って、見守っているのが現状。
2、JAに販売すればお米の単価は同じなのだから、収量が同じくらいなら別に今までどうりで良いのではと思っている。お米の美味しさにはあまり関心がない。
3、植付け間隔をここまで広く(2倍)にして失敗の確率が高いのではないか。リスクの多いこと、新しいことをとりいれようとしない風潮がある。
美味しいお米作り まとめ
「太陽いっぱい栽培」することで一粒一粒がしっかり充実したお米がとても美味しいお米として収穫できるようになります。
お米づくりの高齢化や後継者不足に対してネックといえる田植え作業が格段に省力、低コスト化が実現できるようになります。
この栽培方法を取り入れるとお米づくりが楽しくなった。お米づくりを見直すことが出来今まで以上に生産意欲がわいて植物が伸び伸び育つと美味しい作物になるのが実によくわかったと生産が語ってくれます。
おコメ稲本来の持っている能力を引き出す栽培の方法の糸口がこの方法には感じられます。生産者の心が伝わる美味しいお米が出来ると確信しました。
▼庄内平野の稲刈 大谷さん山形県酒田市